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乱れ牡丹
斎藤は少しばかり眉間にしわを寄せて座っていた。
「おい。」
その開け放った部屋の前、目の前の縁側を通過した沖田に、慌てて斎藤は声をかけた。
「やあ斎藤」
「・・・やあ斎藤じゃない。あんた俺の下帯、どこやった」
稽古のあとに汗を流そうと昼風呂に入って出てみたら、斎藤の下帯が消えていた。
斎藤に対してこんな事は、念友の沖田にしか出来まい。が、沖田は意味もなくこういう事はしない男だ。
あいわらず何を考えてんだかわからんと悪態つきながら斎藤は、
下帯をつけないままに着物を羽織って、妙にすーすー風のとおる腰に気を持っていかれつつ部屋に戻ってきたところで。
はかったように不意に現れた沖田に、
「出せ。俺の。」
掴みかかった。
「よりによって、しまっておいた全部の下帯隠すことないだろが。何考えてる」
「土方さんの部屋の押入れにつっこんである」
「・・・・」
本当に、何考えてんだ。
「なら持って来い」
「土方さんなら今は出かてるぜ」
沖田は頓狂な返事を返すなり、
「な・・待っ」
斎藤を待たず、すたすた去ってしまった。
(なんだっていうんだ!)
斎藤は土方の部屋へつくなり力任せに開け放ち。
バシーンと背後で障子を鳴らし、不在の土方の部屋をどかどか通過すると、押入れの取っ手を掴み開けた。
上の段には布団が一枚だけ。上に斎藤の下帯は無さそうだった。
斎藤はため息ひとつと膝をつき、下の段の暗がりの中へ頭を突っ込んだ。
手をのばし適当に探ってみれば、予備の布団の上に山積みになっているらしき衣類が、ばふっと手触りを返してくる。
・・・・この衣類の山から、いったいどう探せってのか。
手当たり次第に掴んだ物を引っ張り出して見てはハズレで引っ込める。
(これじゃ、わからん。)
しばらくそんなことを繰り返していると、
背後で、ふと斎藤が勢いつけて開けたはずの障子が閉まる音を聞いた。
「っ・・副長?」
四つんばいで押入れのなかへ頭を突っ込んでいた斎藤は、慌てて出ようとして後ろへ膝を歩ませ、
「っ!!」
直後に、尻を撫でられた斎藤は飛び上がりかけた。
危うく頭を上の段にぶつけるところで慌てて抑え、首だけ回して、背後の影を見やれば、
「・・・。」
土方が帰ってきたのかと思ったら、違う。
沖田だ。
「あんた・・・。」
げっそりと見返した斎藤と、
視線が合うなり沖田のほうは、ふっと目を細め。
その手が突然、下帯をまとっていない斎藤の肌へ、もぐり込んで直に触れ、
「っ!」
指先だけで撫でる、ざわっとした感触に斎藤は、咄嗟で声も出せず背を反りかえらせた。
「沖、なにし・・っ」
「探すの、手伝ってやろうか」
着物の下から斎藤の肌を撫でながら、沖田が微笑う。
「って、あんた自分で隠しておいて、」
尻まで撫でてきて、何が手伝ってやろう・・・
(尻まで?)
ふと斎藤は違和感をおぼえ。
「沖田、まさか・・」
言いかけた斎藤の。
体は次の瞬間。
押入れの奥へと押しやられていた。
「なにすっ・・!!」
慌てて肘を突いた斎藤の背後、沖田の被さってくる気配。
(沖・・?)
「一度は、日のあるうちから押入れン中でやるのもいいかと。」
(・・・は?!)
「・・あんた、まさかそれで俺の下帯・・・って、わ・・!放せ!!」
「土方さんが帰ってきたらそれはそれで面白い」
「沖田!!」
抗ったのもつかのま。
四つんばいで自由が利かない斎藤の体は、いいように捕らえられ、
そのまま衣類の中へと、勢い良く顔から押し込まれた。
「っふ・・!!」
頬に押し付けれた布の柔らかい反発から、逃れるように顔を上げた斎藤の、腰は、
沖田の両の手に抑えこまれ。
「この・・いいかげんに・・っ」
「いいかげんもなにも。これからだろうが」
よりによって背後で沖田が意地悪い声で笑う。
斎藤の着物はただでさえそれまでの衝動で乱れた上に、ゆるく捲くれており。
四つんばいで下帯をつけていない斎藤の尻を撫でるようにして移動してきた指に、斎藤は必死に避けようと身をくねらせた。
「沖田・・!やめろ・・っ・・!」
「やめない」
片手で逃げないよう斎藤の腰をしっかり掴みながら沖田は、斎藤の後ろからもう片方の手をさらに伸ばしてゆく。
斎藤のきつく閉じようとする脚の間を割って侵入し、尻の菊口をつうっと撫で、通り。
支えの無い斎藤の前の身を、そして一瞬強く握った沖田は、
あっと悲鳴をあげた斎藤の腰を、もう一方の手でいっそうきつく捕らえたまま、
「っ・・・やめ・・!!」
「俺の手のなかのおまえは、もうこんなに硬いのに、それでも”やめろ”?」
などとさらり嘲笑うと、斎藤の前を掴んでいるほうの手をぬるりと滑らせ、
玩ぶように先端の中心を手の平で、撫でまわし始めた。
「くあ・・あっ・・」
沖田の手から逃れようと、前へ肘を進ませる斎藤の腰は、だが沖田のほうへと引きずり戻される。
力の入らなくなってゆく斎藤をいとも簡単に弄び沖田は、
そのまま斎藤の前がきつく張り詰めたのを見計らい、甚振っていた手を離すと。
斎藤の意思とは別に、素直に快楽を求めて徐々に脈打ち出している菊口へ、その太い二本指を滑らせた。
「おき・・!!は、はなせ・・・っ」
「まだ言う」
ぐっと三本目の指までを突き挿れ、露わになっている斎藤の白い尻へと沖田は、吸い付くような口付けを落とす。
「ほら、・・これでもまだ嫌か」
「っ・・」
四本目の指が、斎藤の中を暴れ、ひしめく内壁を押し、
「っ・・は・・ぅん・・!」
斎藤は堪えられなくなって咄嗟に肘を歩ませた。
が、その最後の抵抗を試みたのも効かず。沖田の一瞬早い反応で、斎藤の腰はがんじがらめに捕らえられてしまい、
「やめろ・・つ・・ああ・・あああっ・・!!」
指が引き抜かれた直後に斎藤を襲った、
己の奥に潜り込んでゆく、沖田の肉棒の圧迫に。
斎藤の堪えていたものはすべて、蹴散らされ。
斎藤は自身を支えきれず、
沖田の身が斎藤の奥まで届いた刹那に、がくんと肘を落としてしまった。
「あいかわらず感度が良いことで」
低くからかう沖田の声が背後で笑う。
その瞬間、斎藤の体は引っ張り上げられ。
再び四つんばいの肘立ちにさせられた斎藤のその背は、続いてひときわ深く奥を浚われた衝撃に仰け反った。
「っあああ!!」
びくびくと背を奮わせる斎藤に、
「それとも、」
沖田は一気に腰を引き。
一度目よりも更に荒々しく、突き挿れ。
「・・こうしたほうがいいか?ん?」
斎藤の腰をがっしりと掴むなり、
続けざまに、激しく揺さぶった。
「や・・めっ・・くッ・・ん・・ああ・・っ・・は・・」
耐えようとする斎藤の、咽喉から毀れおちるそれは、もはや抑えきれぬ艶声で。
「いい声だ・・」
きりきりと締め付けてくる斎藤の内壁に、沖田のほうはひとつ大きく息を吐き出し、
「もっと聞かせろ、斎藤」
理性を手放すものかと踏ん張る斎藤の、羞恥をわざと煽るような言葉を囁きかける。
「・・っ・・」
未だ僅かに留まる理性の内で斎藤が、反抗心で、声を出すまいと咄嗟に口をきつく結んだ。
「ふ・・うっ・・ん、ん・・っ・・ふ」
それでも、
突かれてせり上がる快楽に、
咽喉を走る嬌声は抑えきれず。
斎藤の抑制が、突かれるたびに薄れ、毀れ。
「っ・・ん・・っ、んっ・・あ・・っ、あ・・ああ」
ついに再び喘ぎ出す、その声を。うっとりと聞きながら沖田は、斎藤の前へと手を伸ばすと、
揺れている斎藤の前をゆるく握り止めてやり、
突く振動に調子を合わせ、広い手の内で甚振った。
「う・・ア・・、・・は・・っ・・!」
その鋭い快感は、
斎藤の意識を振るわせた。
斎藤の喘ぐ声が変わってゆく。
「・・っ・・斎、藤、」
まもなくいっそうの強烈な締め付けに、荒く息とともに斎藤の名を吐いた沖田と、時同じくして、
「沖・・っ」
内と外への二重の刺激に、
「・・っ、・・も・・う・・っ・・!!」
今度こそ力を失い、肘を折って前へと倒れこんでしまった斎藤の、
意識が堕ちる、
そのほんの手前の瞬間に。
沖田は斎藤の脚を掴み上げると、身を繋げたまま斎藤を仰向けに返した。
(・・・っ・・)
かろうじて在る意識のなかで斎藤は、目の前へ覆い被さってきた沖田がその片腕を、斎藤の背の下へ通してきたのを感じた。
そして沖田のもう片方の手が。ぐったりと流れている斎藤の片手を取り。
されるままに斎藤が、その手に導かれ沖田の首へしがみついた、
直後。
斎藤の体はふわりと、浮いた。
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