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第3話
この時の自分を、私は褒めてやりたい。
彼のなんとも悩ましい姿に、私の炎が一気に黒く燃えたぎったが、寸でのところで、それを檻の中に閉じ込められたからだ。
握られていない右手の人差し指で、ガブリエル様の柔らかくベビーのような唇を閉ざした。
「それ以上言ってはなりません。それを聞いたら、私はこのお屋敷から出ていかなくてはなりません。ガブリエル様、よくお考え下さい。それを言って、私と離れるのか。それとも、叶えられずとも、私を一生傍に置いて下さるのか」
半開きの唇を優しく、そっと擽るように撫で、私の熱を彼に伝えた。それが、私には精一杯の告白であった。
「もしも、貴方のお傍に置いて下さるというならば、私は命尽きるまで貴方から離れません。貴方のために、この身を全て捧げます」
卑怯で残酷な選択を、私は幼い愛しい人へ告げた。
彼の瞳は戸惑いに揺れ、今にも泣き出しそうだった。
とても可哀想で、
ーーーそして、可愛らしかった。
許されるならば、そのまま頭から足の先まで、私の腹の中へ喰らいつくしてしまいたかった。
ポロリ、とダイヤのような涙を1つ溢し、彼は「傍にいて…」と頼りなく呟いた。
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