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 内腿をなだめるように撫で広げられながら、我慢がきかずひくつく窄みに熱い昂りがあてがわれる。手塚が体ごと距離を縮め中に入ってくると、ふたりで同時に呻いた。  両肩をきつく抱かれながら奥まで満たされていく。ぴたりと根元までくっつくと、さらに奥をゆすり上げられた。 「んっ…あ…あぁ!」 「あっ…あ…やっと聖さんの中に入れた…聖さんの中、すごい気持ちいい…」  とくとくと二人の高い脈音が重なっている。胸も、体の奥でも。  眉のあたりを少し歪めるこんな切ない手塚の顔は滅多に見られないと思うと、見つめているうちに自分も切なくなる。  ゆるやかに手塚が腰を旋回させると、すっかり手塚のものを受け入れた中がぐちょりとかき混ぜられ馴染んでいく。 「…ん…っ…」 「…あ、ゴムつけるの忘れた…」  あんなに周到に準備をしていたのに…と、思わず気が緩んで小さく笑ってしまった。手塚の首元に腕を絡め、耳に唇をつけ囁く。 「いいよ。一番奥にお前のをぶちまけても…」  ぎっちり隙間なく呑み込んでいるものが、体の中でむくりと質量を増したのがわかった。 「もー、泣いてもしんないからね」  子供っぽく言い捨てておいて、すらりと締まった上体を起こすと、欲情を滲ませる男の目で見下ろされた。  ぎちぎちと奥を突いていた熱い屹立がずるりと抜かれる。内壁が急激に収縮し引きとめようとして、その感覚にぞわりと背中が痺れる。もう一度柔襞を擦りながら硬さを増したものを突き入れられ、悲鳴に近い声を上げた。 「っあ!…っん…っ」 「……やばっ…。俺の方が持ってかれて、泣かされそう」  何かをやり過ごす様に手塚が目元を伏せている。震える睫毛が意外に長くて、快感に朦朧とし始める中で、綺麗だなと思った。  この綺麗な男が自分と繋がって、どうしようもなく遣る瀬ない表情を見せるから、胸に歓びが湧いてくる。それが独占欲だと気づくと、言いようのない心苦しさに囚われる。  切れ長の涼しげな目が優しく見えるのは、黒目がちな大きな瞳のせいだと気付いたのはいつだったか。真剣なとき、夢中になっているとき、その瞳が黒い宝石のようにキラキラ輝くのが好きだ。  すっと通った鼻梁、くすみのない形のいい唇。全体の作りは男っぽいのに、どこか甘く柔らかい雰囲気がある。  無防備に笑うと急に幼く可愛く見えるのに、今は男の欲を隠すことなく、色気を撒き散らしている。  数知れない表情を今まで見てきたけれど、自分にしか見せない顔を知る度、胸が甘く疼く。  囁かれる好きだという言葉がどれほど頭を痺れさせるか、切ない愛撫が体の芯に熱を灯すか、この男は知っているんだろうか。  自由な手塚を愛おしいと思うのに、この手の中に捕まえて離したくない。矛盾を含むのが、愛ではなく恋心なんだろうか。

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