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憧れと弱味
僕は最初、入学した男子校の生徒会で会長を務める彼に憧れを抱いていた。
しかし時が経つにつれていつしか憧れは恋慕に変わって行った。
もしかしたら初めて彼を見たその時から、僕は惹かれていたのかも知れない。
※※※
4月に入学してきて数ヶ月が経った。
それまでの僕は、本当の自分を隠しただ誰の目にも止まらないように、教室の隅でぼんやりと何となく過ごしていた。
必要最低限の友達とだけ連み、それなりに日々は充実していたと思う。
けど入学オリエンテーション時、舞台で新入生に向けてスピーチをする彼 霧宮 蓮 に出会う。
それが始まり。
毎日自分を隠して必要もない黒縁の眼鏡を付けて気を張る生活に疲れたのだろう。
「すいません」
「はい、どうぞ」
僕は生徒会室に足を運んでいた。中から許可の声が飛んできてから恐る恐る扉を開く。
「失礼します。1-C、笠間 臣 です。僕も生徒会の一員として働きたく、参りました」
中には生徒会長と他の役員数名がおり、一斉に視線を浴びて緊張が走った。
意を決して入会希望の旨を伝える。
「なるほど、入会希望ね」
生徒会長はそう呟き、何やら考え込む。
周りの役員達はひそひそ話し合って次に1人がこう言った。
「まぁ良いんじゃない?実際このメンバーじゃ切り盛り難しいし、人手は多い方がいいだろ」
との意見に次々と賛成の声が上がり、僕は安堵したその時。
ガタッ、と生徒会長は椅子から下りて僕の元へゆっくり歩んで来る。
彼が纏う雰囲気に圧されて1歩後退るが直ぐに背中には扉の感触。
「そうだな、じゃあお前を会計係に任命しよう。ようこそ生徒会へ」
蓮は腰を折り超至近距離で僕を観察してそう告げてから離れて行く。吐息が触れた部分が熱く、ばくばくと心臓が煩い。
「臣、よろしくな」
5人の役員達が口々に歓迎の言葉を口にする一方で不穏な呟きが聞こえた。
"あれは目を付けられたな"
────
そして現在、僕は放課後に実習棟の奥のトイレへ足を運んでいた。何故わざわざと思うかも知れないが察して欲しい。
「はぁ…っ、会長…」
ぱたん、と個室の扉を閉めて施錠。
徐に便器に座ると既に半勃ちの性器を取り出して扱く。オカズはもちろんあの生徒会長。
僕はこの時自慰に耽り過ぎて足音にも気づかず、同時によく生徒会室を確認しなかったのを後悔することになる。
「こんな場所で随分楽しそうなことをしているな。なぁ、臣?」
「っ!…あ、何で…」
びく、と聞き慣れた声が扉越しに聞こえて青ざめる。
「様子が変だから追ってきた。…それより、ここ開けてくれないか?」
開けたくないと拒みたかったが、そんなことをして機嫌を損ねた会長は扉を蹴破りかねないだろう。
実際に声色が既に穏やかではなかった。
葛藤の末、震える手で鍵を解錠する。
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