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第11話「夏休み その2」

 夏目たちは、更に山頂へ向けて歩みを進めた。山道は緩やかで、有名パワースポットがある為人の往来も比較的多くなってきている。夏目たちは山道を降りて来た人たちと挨拶を交わしながら先へ進んでいく。すれ違うグループは有名スポットなだけあって女性が多かった。 今から行く場所は山頂の手前で、滝が流れておりその迫力が凄く、お利益がありそうだとテレビで特集されていた。  山道は一本道で、整備もきちんとされておりまず迷うことは無いだろう。夏目は途中立ち止まり水分を補給する。その間にメンバーたちと少し距離が開くが五反田は夏目が止まるたびに自身も立ち止まり夏目を待ってくれた。 「ありがとうございます、五反田さん」 「山道で一人になるのはよくない。整備されている道でも何があるか解らないからな」  そう言って五反田は歩くペースを夏目に合わせる。二人は景色や他愛無い会話を楽しみながら新緑の中を歩いた。暫く歩いていると前方が何やら騒がしくなってくる。何事かと夏目は首を傾げた。 「どうしたんですか?」 「実は目を離した隙に実葉がいなくなってしまって……」  須王は焦り気味で辺りを見渡す。楓の姿はどこにもない。動揺する須王と夏目と日浦をよそに五反田と八辻は至って冷静だ。五反田がスマートフォンを取り出し、操作する。どうやた楓のスマートフォンに電話をするようだ。暫くすると、夏目の後ろの方で何か音が鳴るのが聞こえた。振り返り、その場へ行くと、副会長と表示されたスマートフォンが落ちている。 「うわ、これマズいんじゃ……」  そのスマートフォンは、どうやら楓の物らしい。五反田は小さく舌打ちしてから終了ボタンを押した。辺りを見渡すと、道から外れた部分が誰か歩いたような跡があるのに気付く。楓は自分から道を逸れたのだろうか。夏目は誰かが通ったであろう場所を同じように進む。それにストップをかけたのは五反田だった。 「一人は危ない。着いて行こう」 「あ……ありがとうございます」  夏目たちは一緒にけもの道へと入っていった。

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