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第2話
クリスマスが近くなると、町は一気に輝きを増す。
ぴかぴか光るイルミネーション、毎度おなじみのクリスマスソング、サンタにトナカイ、彼氏彼女にあげるプレゼント、そしてイチャつくカップル。
「クソッ。なんでどいつもこいつも幸せそうなんだよ。可愛い男は不幸になれ、そして俺に抱かれろ」
なんの収穫も無く、ただ一人町をぶらつく自分の姿はなんとも哀れに見えた。
こんなところを園原に見られれば、きっと憐れみに満ちた目で「ざまぁww」と鼻で笑われるに決まってる。
「はぁ~~……もう帰ろ」
寒さと精神的苦痛に耐えきれなくなってきた俺は、なんだか色々とめんどくさくなり、諦めて家に帰ろうと駅の方へ足を運んだ時だった。
「お兄さん。今暇かな?」
小さな手で袖を引かれ、不意に足が止まる。
なんだか、嗅いだことのある匂いがフワリと香った。
「え、と」
「ねぇお兄さん。僕、今とっても寒いんだぁ……」
袖を掴む手がギュッと強くなる。
寒い。それはきっと寂しいという意味だろう。
猫耳フードの黒パーカーに、滑らかな黒髪、そして雪のような白い肌。身長は園原と同じ位の可愛い男。
「うん、俺好みだ」
俺は冷たくなった彼の手を握り、そして誰にも聞こえないよう耳元で甘く囁く。
「いいよ、俺が温めてあげる」
俯きながら耳が赤く染まっていく彼を確認して、俺はそのままゆっくりと肩へ手を回し。イルミネーションとはまた違った輝きを見せてくれるホテル街へと足を運んだ。
* * *
「大丈夫かい?もしかして緊張してる?」
「い、いえ!」
ホテルに着いた俺達は、綺麗に整えられたベットの上へ座り。身に着けていたマフラーやコートを脱ぎ捨てた。
きっと彼は、男とホテルに来てセックスするのが初めてなのだろう。ずっと下を向いたまま動かない。
なんて初心で可愛い子なんだ。
「(それに……)」
彼は、どこか園原に似ている。
初恋の人に似ている相手と今からセックスするなんて、なんかドキドキするというか。興奮する。
「大丈夫、緊張しなくていいよ。俺がリードしてあげるから」
「え、ぁ……えっと……」
「ん?」
モジモジしちゃって可愛いなぁ。
そんなふしだらな感情が俺をうずうずさせ、早速手を出そうと身を乗り出した時だった。
「じゃあ…………お前はそこでジッとしてろよ。茂」
「……え?」
パサリと脱げた黒髪の下から、見覚えのある栗色が目に付いた。
状況を整理する暇もなく、俺の身体はベットの上に寝かされ。猫耳フードの彼が覆いかぶさるように馬乗りになる。
「さてと……」
ギシッとベットの軋む音が俺に危機感を知らせてくれたが、どうやらもう色々と遅かったみたいだ。
「調教開始だ」
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