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第1話 命side
午前1時。
公園で犯罪の現場を見てしまった。
「…っあ…や、やだ…ぁっ」
「うるせえぞ、黙らせろ」
「はいっ」
三人の男が一人の小さな少年に性器を咥えさせている。その少年は服を無惨にもギタギタにされて白い肌を惜し気もなしに晒していた。
「おい」
可哀想に思った俺はその現場に近づき声をかける。少年は涙を流して俺を見た。そして口を動かし「助けて」と声にならない声を小さく零した。
「あ?誰だお前。」
「子供に寄って集って何してんだクズが」
主犯であろう男は性器を片付けながらも怒った赤い顔をこちらに見せて近づいてくる。その後ろで残りの二人が俺を見て歯をカチカチと鳴らしていた。
「だ、だめです!!和泉さん!!そいつは浅羽の…!」
「はぁ?こんなやつが浅羽なわけねえだろ!ヒョロっヒョロじゃねえか!」
そうして俺に拳を振りかざしてきた。それを避けて足で蹴り上げ男を地面に倒してから、泣いている少年に手を差し出す。
「逃げるぞ、走れるか?」
「…ぁ…足…動かな、」
よほど怖かったのか、少年の足は震えるばかりでその場から動いてくれないらしい。仕方なく少年を抱え公園を走り去る。
後ろで怒鳴り声が聞こえてきたが気にも止めずただただ走った。
しばらくした所で少年を下ろし自分の着ていたパーカーを少年に掛けてやる。それを受けとる少年は絶望したような暗い顔で俯いて、今にも死にそうだった。
よく見れば少年の太ももを白濁とした液が流れていて"あーあ"と思う。
「何でこんな時間に外にいる?家は?」
「…ないの」
「名前は?」
「お名前も、無いの」
ああ成る程、ワケアリか。まあ、そうじゃないとこんな時間に小さな子供が一人で外にいるわけがない。
家もない、名前もないなら、警察にあいつらを突き出したところでこいつが面倒なことになるだろう。それにこのままにしてたらこいつは死んでしまうかもしれない。
仮にそうなったとなれば、俺が早河に怒られる。「助けられた命を見捨てたのか」と。説教二時間コースだ。あれだけは避けたい。
「おい、ついてこい」
少年にそう言うとコクリと頷いて俺の後をついてこようとするが、足がまだ震えていて上手く歩けないのかドテッと転けた。それに溜息を吐くと一度びくっと震えた少年が謝ってまた立ち上がり歩こうとする。
その姿が痛々しく思えて、また少年を抱き抱える。
「ごめ、なさ…ぃ」
「いい。気にすんな」
そうして俺は早々と自宅に向かい足を進めた。
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