「寒っ」この寒さじゃ体を丸めて歩くのは仕方ないでしょう。 なんか猫背じゃない？って言われても、どうせ僕はお呼びじゃないでしょう。 この前の合コンも数合わせに呼ばれただけ、相変わらず僕はハズレくじ。いつもの事。 「斎藤、健康診断だけど、明日の朝８時半に駅前に診療所のバンが迎えに来るから。小さな診療所だけどドクターが綺麗な人だから。楽しんで来いよ」 そうバイト先の店長にいわれた。ドクターの何を楽しめって言うのかな。早く終わらせてもらって、大学のラウンジで休みたい。 あれ、そう言えばいつも一緒にお茶飲んでくれる田中この前彼女出来たって……。じゃあ僕は本当に一人ぼっち。 考え事をしながら駅に向かうと、待ち合わせ場所には既に車が。 あれ？もう来ている？停車中の黒いバンに近づくと車の前に立っていた男の人が声をかけてきました。 「マサキさん？」 下の名前で呼ばれました、親近感でも売りにした診療所？ 「はい、そうです」 「遅かったので逃げられたかと思いましたよ。みんな待たせているんで早く乗ってください。」 まだ8時ですけれど、店長が時間を間違えて教えたとか？それより健康診断が嫌で逃げるってどういうことでしょう？ バンは僕が乗ると勢いよく走り出しました。連れて行かれたのはマンション。この中に診療所が？ 店長、小さいって言っていたけど小さすぎます。 「早くしてください、時間ないから。明るいうちに撮らないと」 明るいうちに？えっと、レントゲン室って暗いですよね。 ドアを開けると白衣の綺麗な……男性が。 店長、綺麗なドクターって男の人！ 「初めまして、香月と言います。マサキ君はこういうのは初めて？」 いや、健康診断初めてなんて有り得ませんよね。 「いえ、大学に入ってからは初めてですけれど」 「そう。良かった。以外とハードだから覚悟してよね」 すっと手をとられて部屋へと連れて行かれました。ハード？何がですか？真っ白い部屋にはベッドが一台。何だか医療器具のような物が横のワゴンに乗っています。 そこまでは、理解出来ますが。なぜカメラが、あるのでしょうか。 あれは成人式の写真撮影で見たレフ版。それにライトまで。 医療ミスをなくすために撮影……って訳ないですよね。