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約束

ナオは、自嘲気味にそう言った。 独りになればいい、なんて。 ……やっぱり、俺はナオに嫌われてた…? 「………怖かった」 え…? 「……カナが他の奴らと楽しそうにしてるとイライラして、カナに触って欲しくなくて、俺だけのものにしたいって思ってる自分が怖かった。側にいると自分じゃなくなる気がして………あんなの、初めてだったから…怖くてしかたなかった……」 ナオの震えるような声。 今でも、そう思ってるように感じた。 「そんな自分を否定したかったんだ。だから、独りにした………離れられるし、お前が他の奴のものにならないって、安心した…。お前が俺だけを嫌ってるのも分かってた」 ナオはだんだん視線を下げていく。 「俺、おかしいんだよ。それすらカナが自分のものになったみたいに思えて……」 初めてナオのことを知ったような感覚だった。 俺が知っているナオは、ずっと太陽みたいな笑顔で隣にいてくれて。 もう一つ覚えているのは、俺を侮蔑の目で見る姿。 でも、こんなナオは見たことがない。 こんなに自分に怯えているところを見たことはなかった。 「間違ってるって気づいて、もう昔みたいに側にいれないって分かってるけど……カナのこと滅茶苦茶にしたのに、お前のこと……諦められない…。まだ好きで……一緒にいたいって思ってる……っ」 「……なんだよ、それ」 呟くと、ナオは目を閉じた。 まるで、殴るなり罵倒するなり好きにしてくれというように。 もし俺がその首に手をかけても抵抗しないだろう。 本当に……なんなんだよ。 触れるとひく、と震えた首。 そのまま俺は腕を回した。 「………本当に、滅茶苦茶だな…っ」 きっとナオは今、何が起こったか分からないような間抜けな顔をしてるんだろうな。 見えなくてもなんとなく分かる。 「ナオ……やっぱり俺、異常だよ…。だって、……確かに酷いって…怒ってもいるけど………それ以上に…嬉しいって思ってる……」 身勝手な理由。 怒りが全く無いわけではない。 けれど、俺を独占したいが故だったと知ると、それさえも嬉しく思えてくるなんてやっぱり俺は異常だ。 だからって、もうこんなことは二度とごめんだ。 「……もう、いなくならないで」 あんな惨めで悲しくて、孤独で、寂しい思いはしたくない。 「………俺でいいの…?独占欲強いし、離してやれない……逃げたいって言っても聞かないかもしれない。ほんとにいいの…?」 「いいよ…だからもう…独りにしな、で…ッ」 これは夢なのかもしれない。 俺の願望だらけの夢。 でも触れている所が温かくて、夢か現実か分からない。 背中に回された腕には、確かに力が込められた。 夢なら、覚めないで。 現実なら… 「もう離れない。独りにしない……っ」 約束して。

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