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疑心暗鬼と幸福 9

心臓の鼓動がうるさい。 背中がゾクゾクして、痙攣してる。 身体の中が熱くて。 「……っ、持ってかれそ………。挿れただけでイったんだ?」 「…え……?」 ナオに言われて初めて気づいた。 腹の辺りに出したものが飛び散っている。 挿れられた衝撃でイった……? 何も触られずにイったってこと…? 嘘だろ……。 恥ずかしすぎて居た堪れなくなって、そのせいで視界がどんどんぼやけてくる。 「カナ、なんで泣いてんの…?」 優しい声音で聞かれて、さらに涙は溢れていく。 「だって……そんな…挿れただけでって、……そんなの、普通じゃない、し………引かれたかもって、思ってっ……こんな…、初めてで……」 こんなこと、今まで一度もなかった。 後ろの刺激だけでイくなんて絶対ありえなかったのに。 こんな身体…引かれるに決まってる。 「思うわけねーじゃん、そんなこと。可愛すぎるくらい」 「でも……」 「それに、すっげー嬉しいよ」 急に吐息混じりの声になり、胸がドクン、と鳴る。 「…なに言ってんの」 「それって気持ちよかったからそうなったんだろ?俺ので気持ちよくなってくれてるなんて…ほんとたまんない」 「んっ……」 耳元でそんなことを囁かれ、鼓膜が響く感覚に震える。 その間もナオは額や瞼、頬、耳に唇で熱を落とし、首筋をスーッとひと舐めした。 その行動一つ一つに身体は反応してどうしようもなくなっていた。 「ほら…こうやって反応してくれてるのとか、全部が凄くかわいくて仕方ないんだよ」 「ん……ぁっ、」 蕩けてしまいそうになるほどの甘い言葉。 「全部」ってなんだよ。 そういうこと、さらっと言うな。 言いたいのに、言葉が甘すぎて何も言えない。 「あ…、あっ……」 とん、と奥を突かれそれに合わせて脚が揺れる。 身体の中がきゅうっ、として掠れた声がでる。 部屋の中には二人の弾んだ息とか細い声、布が擦れる音と時折肌がぶつかる音が響いた。 言葉も何もなくて、ただ襲ってくる快感を感じることしか出来ない。 「あっん……や、ナオ…それやだぁ……」 「なんで…?すごくイイのに……」 「うぅんッ、ああ……!」 「ほら、よさそうな顔してる」 奥の方を擦られると気持ちよすぎてどうにかなってしまいそう。 少し眉を寄せたナオの顔が淫靡で、その顔は俺がさせているのかと思うと嬉しくなった。 「……ナオっ、気持ちいいの……?」 「ん…?気持ちいいよ……カナの中、あったかくて、突くと締めつけてきて……」 よかった。 ナオも俺ので気持ちよくなってくれてる。

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