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二人
「………カナ?」
真下にいるカナを見ると、目を閉じてぐったりとしていた。
肩を軽くたたいても全く反応が無い。
でも呼吸はしている。
もしかして……気を失った?
……多分そうだ。
今考えてみれば、退院したばかりなのにその日の夜にって………。
「はぁー…」
自分の自制心の無さにため息がこぼれた。
もう少し触れたい、って思ったから言ったけど…結局最後までしてしまった。
でも「欲しい」とか「触って」なんて、潤んだ目で言われたら我慢出来なかった。
中に挿入っている自分のを抜くと、白濁液がたらりと流れる。
それを見て、やっと欲しかったものを手に入れたような、征服欲が満たされた気がした。
「………」
男同士についてそこまで詳しくないけど、このまま放置はマズい、よな……。
用心するに越したことはないと、一応中のものをかき出した。
俺があんなことをしなければ、カナは不安になったりしなかった。
後悔は薄れることなく、濃さを保ったまま在り続ける。
もしカナに別れを切り出されたらどうなるんだろうと考えた時、閉じ込めてしまいそうなほどの自分の凶暴さに気付かされた。
怖いのは俺も一緒だった。
けれどもう二度と、笑顔もぬくもりも失いたくないと思ったら暗い思考にストップがかかる。
その気持ちに気づいたら怖くなくなった。
だから、もう傷付けない。
一番大切なものを見失ったりしない。
寄り添うように横になり、幸せな気持ちに浸りながら目を閉じた。
******************
端から見ればとても異常な光景だろう。
イジメの主犯とその被害者が一緒にいて、しかも仲が良くなっているとか普通ならあり得ない。
周りは何か恐ろしいものでも見たような顔をしている。
まあ、こうなったのは自分のせいなんだけど。
それなのにカナは本気で心配そうな顔をしてきた。
「ナオ…やっぱりここで一緒にいたら変だよ。俺は前からこうだったからいいけど、ナオまで嫌な目で見られる……」
「俺も別に気にしてねえよ。元々そこまで親しい奴いなかったし」
大体、前まで一緒にいた奴らなんてカナに対する悪言を言っていたら集まってきた奴ばかりだ。
本気で友人だなんて思ってなかったと思う。
我ながら最低な人間だったと改めて感じて、カナもなんとなく分かったのか何も言わなくなった。
きっと卒業までこの状況は続く。
こんな周りから変な目で見られる状況でも晴れたような、すっきりした気分なのはカナが隣にいるからだ。
「なんか…俺たちって『二人だけ』みたいだったね」
「二人だけ?」
「世界にいるのは二人だけ」
「…そうだったな」
周りの人たちは見えてない。お互いのことしか見えていなかった。
「だからこうなったけど…幸せだなあ、なんて思ってる」
「…俺も」
「変かな?」
「そうかも」
俺たちは二人ともおかしいのかもしれない。
でも、誰の隣にいたいのかちゃんと分かったんだ。
隣にカナがいて、目が合えば大好きな笑顔を見せてくれる。
名前を呼んでくれる。
それが今、俺にとっての幸せだから。
end.
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