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第1話

「うっ…待っ……ん”んっ」 「鈴香……ね、いつもみたいに言って?俺の一番聞きたい言葉…」 するり、と長い絹のような髪に触れながら、男が耳に囁いた。熱い指が首に巻きつくように回る。 「ねぇ、鈴香」 優しい声色に反対するかのように、自分の身体の奥の、この男に会うまでは意識したこともなかった奥のところに、男のが穿ってくる。 「っあぁ…!」 男の望む言葉は、世界中で最も美しい言葉だ。 だが、今のこの二人にとっては、最も不釣り合いで似合わない言葉である。 言いたくない でも、言わなければ、何をされるかわからない 「んっんぅ……っは、」 焦れたように男は首筋に甘く噛み付いた。その痛みに反応してまとわりつく髪が一房はらりと肌に伝う。 「鈴香、」 漏れてしまう喘ぎ声の間に、途切れ途切れに男の要望する言葉を応えた。 思い出せる限りの姉の言い方を真似して、姉のような高い声で、 「あ、いっ…してっ……」 ままごとのようなその言葉を言うと、耳元で幸せそうなため息がした。そして一際大きく、深く、穿たれた。 「っ――!」 「うん、俺も。……愛しているよ、鈴香」 「あっ待って…だめっアッ…んぁっ」 涙でぼやける視界の向こうで、写真の中の姉が微笑んでいた。

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