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第2話

佐倉(さくら) 涼真(りょうま)の運命が狂ったのは、姉の訃報が届いた高校卒業後の晴れた春の日だった。 涼真と4つ違いの姉、鈴香(すずか)と涼真は両親が数年前に離婚したため、涼真は父方、鈴香は母方に行き別々に暮らしていた。父と母はお互いに連絡すら取り合っていなかったようだったが、涼真と鈴香は月に1、2度茶を飲みながら鈴香や母の近況を聞いたり、あるいは自分の悩みなどの話をした。姉と言うよりは友人のようだった。 その姉が交通事故に遭い死んだと聞いたのは、姉と最後に会ってまだ一週間も経っていない時だった。 久しぶりに聞いた母親が淡々と、しかし震えた声で状況を説明し、父と私を姉が運ばれたと言う病院に来るように言った。 夢なんじゃないか、と思っていた。「もうすぐ結婚するの!高校の頃から付き合っていた彼でね、大学を卒業したら式をあげるんだ」と嬉しそうに薬指の指輪を撫でながら話す姉の声が今も頭の中で聞こえる気がした。 だが、病院にいた姉の姿を見て、夢ではないことがはっきりとわかった。 姉は、死んでしまったのだ。 泣き崩れる母親を支える父の背中越しに、誰かがやって来るのが見えた。 そこで、涼真はあの男に出会った。

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