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第2話

「とうとう明日だな」 神尾良(カミオ リョウ)は、声が震えそうになるのを必死に押さえて、そう言った。「ああ」と幼馴染みの山下流人(ヤマシタ リュウト)は答える。 明日、結婚式の行われるホテルの一室に、神尾と山下は居た。 結婚をするのは、山下だった。そして、山下は神尾の初恋の相手だ。 神尾と山下が幼稚園で出会ってから25年間、互いの癖も欠点も嫌って程知っているくせに、その事実だけは一度も明かされなかった。 そうして、山下は大学時代から付き合っていた女性と結ばれてしまったのだ。 何も知らない山下は、独身最後の夜を祝ってくれと幸せそうな顔で、神尾に言ってきた。 グルグルと腹の中を暴れる嫉妬と怒りと悲しみに、平素でいられる自信が神尾にはなかったが、それでも、自分と過ごそうと思ってくれることが嬉しくて、思わず頭を縦に振ってしまっていた。 「良い眺めだな、ここ。夜景は綺麗だし、海は近いし。結婚した後もさ、記念日とかに良い感じだな」 「……ああ」 神尾は窓の近くのソファに座り、綺麗に磨かれた窓からキラキラと光る夜景を見た。山下もローテーブルを挟んで神尾の向かいにあるソファに座り、やや遅れて外を見やった。 窓に映る山下は、なぜか表情が少し強張っていた。

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