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第3話
「なぁんだよ?なに、神妙な顔してんだよ。お前がそんな顔したって、全然かっこよくなんねぇって」
結婚式という大舞台に、さすがに緊張をしているのかもしれないと思い、神尾はヘラヘラと笑いながらバシバシと山下の肩を叩いた。小学校時代から続けている水泳で培ったバランスの良い筋肉が手のひらから伝わり、その感触に、まだ誰のものでもなかった幼馴染みとの思い出が一気に蘇り、思わず神尾は泣きそうになってしまった。
眉の下がった顔を見られたくなくて、慌てて顔を背けた。
「…っ、あ、そうそう。ワイン。ワイン買ってきたんだったわ。飲もうぜ?」
ソファの横に置いてあった紙袋から、赤ワインとワイングラスを取り出す。
白ワインが苦手な山下のために神尾が選んだ赤ワインだ。グラスを二つ、互いの前に置くと、小気味よい音をさせて神尾は栓を抜く。その瞬間、芳醇な香りが放たれ、トプトプと心地よい音と共にグラスが満たされていく。
不意に、「なぁ」と山下が声をかけてきた。わずかに掠れ、戸惑ったような声音だった。
「ん?なんだよ」
「…お前さ…、俺になんか言うことがあるんじゃないのか?」
カツンッとボトルの先がグラスに当たった。
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