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25.

キューにチョークを馴染ませる動き――何度も見たはずの仕草が引き金だった。押付けた体の確かさに脳が沸騰する 「殴らないのか…」擦れた自分の声が情けなく漂い、額に触れた指先がやるせなさで痺れた。 「殴らないよ」抱き寄せられ重なる唇。頬に手をのばすとボールが転がりポケットに沈んだ。

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