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☆第13話

「―― おぉ、感心 感心。逃げなかったんだな」   指定された通りベッドに座って待っていた   俺の横に、鬼束先生がドカッと腰掛ける。   彼の重みでスプリングのきいた固めのマットが   わずかに沈み、ピンと張った真っ白なシーツの海に   2人分の小さな波が立った。   大人2人で寝てもまだまだ余裕のある   キングサイズのベッド。   普段の俺ならはしゃいで飛び跳ねでもして   遊んでいただろう。   けれど今は、とてもじゃないがそんな余裕は   まったくない。   ―― だけども、最初に羽柴を煽ったのは   他の誰でもない、この自分だ。   その責任は最後まで持たなきゃ……。   鬼束先生は着任から僅か*週間足らずで、   好感度ランキングの上位へ食い込んだ   強者中堅医師。   それに加え、仕事が出来て・人望があって・   気配りも細やかで・働き盛り、男盛りの38才。   震える手を抑えるためにローブの胸元を   強く握り締め、床の一点をじっと見つめる。   そんな、わかりやすすぎる俺の緊張っぷりを   見たからか?   鬼束先生のクスリと笑う微かな声が聞こえた。   勇気を出して顔を上げると、鬼束先生は少し濡れた   襟足の髪を拭っていて、それからおもむろに   俺を組み敷いた。 「うわぁ!」   驚いて声を上げはしたものの、   その動きは決して威圧的ではなく、   なんだか紳士的な動作にさえ思えた。   鬼束先生が体勢を変えたことでローブの前が   はだけ、彼の年の割りには逞しい胸板が露わになる   鬼束先生の胸板と俺の顔の距離は、ほんの数センチ   少し手を動かしただけで、厚い胸板に指が触れそうだ。   (すごぉい……きっと、ワークアウトは毎日    欠かさないんだろうなぁ)   今、俺の上に覆いかぶさっているこの男は、   別に恋人でもなんでもないのだし、   気楽に考えようと、俺は腹を据えた。   ある意味、開き直った俺は、   そろ~り先生の胸板に手を伸ばす。   そして、チラリと覗く鎖骨の上のホクロに触れた。 「……っ」   鬼束先生はキュッと眉根を寄せ、扇情的な瞳で俺を   見下ろしてくる。   その姿が妙に色っぽくて、俺の胸は高鳴る。   男の人のこんな顔、初めて見た…… 「随分といやらしい手つきだな。今時の男子はそんな  もんなのか?」   挑発するセリフを言いながら俺の手を取り、   自分の鎖骨から下へと撫でるように促す。   俺が何度か胸元を撫でると、彼はわずかに   息を詰まらせて目を瞑った。   その姿は大人の男の色気を帯びていて、   俺はこの年になって初めてホントの男の世界を   垣間見た気がした。   そんな事を考えて感動していると、   今度は鬼束先生が俺のガウンの肩口に手を   差し入れてきた。   スルリ、とはだけさせられて肩口が涼しくなり、   わずかに身震いする。 「ん、いい反応だ」   からかうように耳元で囁かれたから、   さらに堪らない。   絶対、絶対わざとだ!   自分の反応を見て楽しんでいるに違いない。 「……ちょ、ちょっとばかり緊張してるだけですっ」   からかわれてるのはわかっていたけど、   初体験の連続に翻弄されていた俺は、   そう答えるのが精一杯だった。   鬼束先生は、そんな俺の反応をおもしろがって   いるようで、さらに挑発してくる。   俺の胸をわざとゆっくりろしゅつさせ、   突起の周りを指先でなぞりながら、耳元で囁く。 「色気のない声は出すなよ。最高の初体験にして  やるからさ……りんたろ」 「ひゃっ!」   胸元で動く指と吐息がくすぐったくて思わず   竦めた肩口に、鬼束先生はチュッと軽くキスを   落とした。   触れられた唇が思いのほか熱くて、全身が粟立つ。   心臓の鼓動が耳鳴りのように響き、   肩までドクドクしてきた。   ――ドキドキしすぎて、心臓が口から飛び出そう   ってか俺は、されるがままに固まってる事しか   出来てない。   (コレって、最悪とちゃう?)   「マグロは男も女も嫌われる」って、   ハウツー本には必ず書いてあるし、ちょっとは   自分の方からも何かした方がいいんじゃ……   なんて、グダグダ考えてるうち、体が勝手に動いて   彼の耳元へ寄った唇が ―― ハムっと、   その耳たぶを甘噛した。    「っ ――!」   小さく体を震わせ鬼束先生は反応したけど、 「攻められるのも嫌いじゃないが、  今は大人しく抱かれとけ」   ―― だ、かれ……っ!   そうなんだけど……そうなんだけど、   改めて言われると破壊力半端ない。   こんなキザったらしいセリフ、ドラマとか   小説の世界でしか使われないと思ってた。   まさか、現実にもあるとは……。   ってか、そんなセリフをサラリと言っちゃうなんて   鬼束先生ってやっぱり場慣れしてる感じがする。   噂通りのイケメンだし、この年令なら、   それなりに経験豊富なんだろうな。   俺がようやく落ち着いたのを確認したからか、   彼は次のステップへと進めていく。   だらしなくローブの前を全開にした俺の恰好は   見ようによってはめっちゃエロいけど。   鬼束先生はそんな俺が中途半端の着ていたローブを   一気に剥ぎ取った。   体が開放感に包まれると同時に、また緊張してきて   強張る。   鬼束先生は、カチコチになったボクの体を解すかの   ように背中に唇を這わせた。   ちゅっ、ちゅっと丁寧に何度もキスを繰り返し、   どんどん下へと移動する。   うっ―― 駄目。それ、ぞわぞわする。   優しく触れる彼の唇が、くすぐったくて堪らない。   快感をなんとかやりすごそうと、   つま先に力を入れて耐える。   それでもモゾモゾとした感覚から逃れる事はできず、   左右に身を捩った。   けれど、それがかえってよくなくて ――    今はうつ伏せにされているから、乳*の先っぽが   シーツで擦れて余計に刺激が強くなった。   この疼きから逃れたい、でももっと感じたい…… 「ふぅ……んっ……」   気がつくと、喘ぎ声が漏れていた。   自らの口から零れ出たとは思えない声に、   自分でびっくりする。   学生の頃、所属していた演劇部の演技練習でだって   上手く出来た試しはなく。   『お前の喘ぎじゃ、せっかく勃ったもんも    萎えるわ』   って、いつも先生に呆れられてたのに。   やっぱ実地だと、自然とこんな風に声が出ちゃう   ものなんだ。   それに、ちょっと背中に触れられたくらいで、   こんな声が出してしまうなんて。   これからその……本番になったら、   どうなってしまうのだ、俺は。   期待と羞恥で、かあっと顔が熱くなる。 「もうそんな声出して。感じ易いんだなりんは」   覆いかぶさってきた鬼束先生は、耳元に唇を寄せて   悪戯っぽく笑った。   自分が今どういう状態か、手にとるように   彼に知られてしまっている気がする。 「や ―― 恥ずかし、から……」   なんとか顔を上げ、彼の方に振り返りながら言う。 「う~ん ―― そのカオ、めっちゃそそる」   鬼束先生には「ちゃんと強請れよ」って   言われたけれど、俺はこの期に及んで   踏ん切りがつかずモジモジしていた。   その間、彼は胸の頂をこねたり、爪で弾いたりして   俺の様子を半ば面白がって見ている。   そんな事を繰り返されていると、   触れられていない方の左乳*までビリビリ   ムズムズしてきて……   ――あぁ……もうだめ。   でも、お強請りなんて……   その熱から逃れたくて、自分の指で左胸に触れる。   するとそこは、既にピンと勃ち上がっていた。   彼にバレないように、少しだけクニクニと指を動かす。 「コラ、ちゃんとわかってるぞ」   けれどそれはすぐ彼に見つかり、ゴロンと仰向けに   され手首を掴んでベッドに縫い留められてしまった   俺はたまらず、内腿を擦り合わせながら身を捩り   快感をやり過ごそうとする。 「我慢するな。ほら、言ってみろよ」   鬼束先生はニヤリ、と笑う。   そして胸に触れるか触れないかのギリギリの   距離まで顔を近づけ、ふっと息を吹きかけてくる。 「ひぅん……っ!」   ―― もう、限界。 「お願い! もっと触って。もっと強く……っ!」   涙目になりながら懇願すると、彼はおもむろに   乳*を口に含んできつく吸い上げた。   キューッとした快感が、先端から下半身へと   駆け巡る。   思わず、彼の腰を強く掴んでしまう。   彼はいったん口を放し、今度は見せつけるように   舌を這わせてチロチロと優しく舐めはじめた。 「よく言えました。こうしてほしかったんだろ?」 「ん ―― んン……は、ぁ……」 「どうだ? 気持ちいいか」   ぴちゃぴちゃという、いらしい音を響かせながら   俺の目を見て反応を窺ってくる。 「ん、気持ち、いい……」   弱々しく、呟くのがやっとだった。   恥ずかしいお願いをしてしまった事と、   目の前で繰り広げられる淫らな光景を   見ている事とで、顔から火が出そうだ。   ……でも、やめてほしくない。   もっと気持ちよくなりたい、この男と――   さらなる快感への期待に、胸が高鳴る。   下半身が疼きっぱなしで、じっとしていられず。   ボクはモゾモゾと膝を擦り合わせ続けた。 「でも、これからプライベートでは俺の事、名前で  呼んで欲しいな」     さっきから疼きっぱなしの下半身のせいで、   思考すらおぼつかない。 「な、まえ……?」 「そう。俺の名前。もちろん、知ってるよな?」 「え、っと ―― あ、はン……おにずか、せんせ……」 「それは役職だ。名前じゃない。ホラ、言ってごらん。  そしたらもっと気持ちよくなるご褒美をあげる」 「ご、ほうび? ホント?」 「あぁ、だから言って。俺のなまえ」 「あ、あぁ ―― は、ぁ……っ、しゅうじぃ……」   鬼束先生……柊二の熱い手が俺の貧弱な胸 ――    お腹の上を通過しソコへ辿り着く。 「はぁっ!! だめぇ ――」   俺は体を強張らせると同時に、その手を制止した。 「ん、どうした? 止めちゃってもいいのか?」 「だ、だって ―― そこは……」 「んー、りんのココはもっと触って欲しいって、  凄く硬くなって、もうびしょびしょだ。ほら、  こうすると――」   って、俺が制止した手でそのまま、   パンツの上から俺の……をグリグリ捏ねくり回す。 「あ、はン ―― だめっ……」 「だめじゃないだろ」   そして、その手を尚もゆっくり小刻みに動かす。 「あ、あぁぁ ――っ、だめ、やめ ―― あ ……」   その瞬間、頭の中で花火が打ち上がった。 「あ ―― あ~ぁ、りんたろ、早すぎ」 「しゅうじの、いじわる……」   もう、彼の目を直視することなんてできない。   俺はそっぽを向きながら、早口で呟いた。 「―― さ、今度は、俺のも気持ち良くしてくれる?」   膝立ちになって、乱暴にガウンを脱ぎ去り   ボクサーブリーフ1枚になった彼の中心もまた、   俺と同じく興奮で昂ぶっている。   ”―― 気持ち良く”って、やっぱ……アレ、   だよね?   とりあえず手をソコへ伸ばし、自分で触っておいて   思わず声をあげた。  「ひゃぁ!」   うわぁぁ …… 触っちゃった。   でも、何か、他の男のモノとは   スケールが違うってゆうか……   下着の上から触っただけでも、   何となく、デカさが想像出来てしまう。 「で、どーお? 初めて男の触った感想は。あ、いや、  ”初めて”でもないのかなぁ~」   (はぁ、その通りです……) 「すごい。ゴリゴリしてて、固くて熱い……」 「ハハハ……直に見てみな」   そう言われ、素直にボクサーブリーフに手をかけ、   下ろして、瞬間フリーズ。   デ ―― デカイ……想像以上のスケール。        その後、ここで繰り広げられた事を俺はあまり   よく覚えてはいない。   だけど、下半身へ僅かに残る疲労感で、   確かに鬼束先生を受け入れたんだと分かり。   寝返りをうった時、隣にあった鬼束先生の   寝顔ズームアップを見て、改めて   あぁ、とうとうこの人とヤッちゃったぁ~……   って、実感した。

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