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第1話(紺side)

初恋は実らないっていうじゃん。 だから仕方ないよね。うんうん。どんなに好きでもさ、やっぱ男同士は難しいよね。ましてやお前はノンケだしさ。当然だよ。ずっと友達だと思ってくれてたのに、気持ち悪い思いさせてほんとにごめんな。俺、人を好きになったのが初めてでさ。付き合いたいとか考えてたわけじゃなくて、ただ「ありがとう」って伝えたかったんだ。切ない気持ちも愛しい気持ちも紺を好きになって初めて知れたし。進路も別々だし、 紺が嫌ならもう会わないからさ。まぁ、実家は近いけど、会わないようにするし。 …うん、でも本当にさ、好きでさ。ほんとにっ。 ご、ごめんな。 ありがとうな。 好きになっちゃって、ほんとに、ごめん。 ひとすじ、またひとすじと、どんどん流れる涙を拭いもせず、笑顔で蒼衣(あおい)は一気に喋った。 卒業式の後、話がしたいと蒼衣に言われたのは、つい昨日の夜のこと。 ベッドの中で、なんとなく眠れなくてぼんやり考え事をしてた。卒業後に行く大学のこと。 高校生活の思い出のあれこれ。 「あいつとの腐れ縁もここで途切れちゃうんだな」 少しセンチメンタルな気分で、小学校からの親友だった蒼衣のことを考えている最中に携帯が震えた。 蒼衣からのLINEだった。 「明日の卒業式の後、話がしたいから時間を作ってほしい」 かしこまって、一体なんだろうと思ったけれど、こいつもずっと一緒にいた俺に対して、センチメンタルな気分になってるのかもな、と思った。別れの挨拶的なものとかかな。 「おっけー、了解。つーかまだ起きてんの? 早く寝なさい。」 送った後、すぐ返信があった。 目が笑ってない、可愛くないクマのスタンプ。 「愛してるよ」のメッセージと共に。 さっきまでのセンチメンタルな気分は消えうせて、いつものやり取りに口元が綻ぶ。 「はいはい、俺も愛してるよ」 可愛くないウサギのスタンプと一緒に送った。 さっきまでのざわざわとした気持ちは消え失せて、目を閉じるとすぐに眠りが訪れた。

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