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第8話
声を掛けた途端に希が飛び起きた。
一瞬、俺をキッと睨むと脱ぎ捨てられた服を素早く身に付け、テーブルの上のノートやペンを掻き集めて袋に放り込むと、無言で部屋を出て行った。
「希っ!待てよっ!!」
着替えの済んでない俺は慌てて身支度を整えると、階段を駆け下りて希を追い掛けた。
玄関のドアを開けた瞬間、日に焼けたアスファルトの焦げた匂いと、照りつける太陽の熱気が身体に纏わり付き、大音量の蝉の声が耳をつんざいた。
目に飛び込んできたのは今を盛りに咲き誇る向日葵の花。
その黄色に埋もれた目の端に、希が泣きながら自宅のドアを開ける姿が映った。
玄関に走り寄って何度もベルを鳴らし、ドアを叩いてその名を呼び続けた。
炎天下の中、どのくらい経ったのだろう。
待てども応答はなく、俺は諦めて汗だくのまま家に戻った。
俺…何てことしてしまったんだろう。
アイツに欲情して、それを打つけてしまった。
女でもないのに、無理矢理こじ開けて抱いてしまった。
謝らなくちゃ。許してもらえるとは思わないけれど。
希…希、ごめん。
でも、俺はお前のこと…
希の母さんが戻るのを待って、尋ねて行ったけれど
「ごめんね、風邪でも引いたのか気分悪くて起きれないって言ってるの。
せっかく来てくれたのに…ごめんね。」
と申し訳なさそうに断られてそれ以上は食い下がれず、とぼとぼと引き下がった。
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