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第9話
その後も希と会うことは叶わず、3日目の朝、突然お袋が
「斗真っ!希君留学するって知ってたの?」
「…留学?何の話?」
「お父さんの仕事の都合で急に決まって、学校の手続きの関係で、今朝一番の飛行機で希君だけ先にアメリカに行っちゃったのよ?
あんた…まさか知らなかったの?」
昨日?留学?アメリカ?
「母さん、何寝ぼけたこと言ってんの?」
「寝ぼけてんのはアンタでしょ?」
母さんが何か言っていたが、俺は希の家へダッシュした。
トラックが家の前に停まっていて、荷物の運び出しが始まっていた。
俺を見つけた希の母さんが
「あ、斗真君!長い間希がお世話になって…ありがとうね。
ちゃんと本人から話したかったらしいんだけど、言いにくかったみたいで…その様子じゃ言わないで行っちゃったのね。
…ごめんね、斗真君。
帰国したらまた会えるといいわね。君も元気でね。」
もう、もう会えない?
俺が最後にアイツを見たのは泣き顔だった。それも俺が泣かした。
そんな俺を嘲笑うかのように、庭先の向日葵がしゃんと立ってぬるい風に揺れていた。
俺は自分の部屋に閉じ籠ると声を殺して泣いた。
希…希…
思い出すのはいつも俺の横でふんわりと笑うあの笑顔。
そして…
俺の下で甘く切ない声で啼くアイツの姿…
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