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第10話
向日葵のせいで、ぼんやりと過去の記憶に踊らされ、俺はしばらくそこで佇んでいた。
流れ落ちる汗が目に染みて、はっと現実に戻った俺は、感傷的な心を無理矢理置き去りにして足早にその場を立ち去った。
帰社すると社内が色めき立っていた。
「何かあった?」
同期の瀬川に尋ねると
「本社から新しいマネージャーが来るらしいぞ。俺達と同い年だけどかなりできる人みたいだ。上司だぜ、肩書きが違う。
ほら、そこに辞令貼り出してあるだろ?」
言われた通りに辞令を見ると
その名前に心臓が止まりそうになった。
同姓同名?俺と同い年?まさか…嘘だ…
『遠藤 希 nozomi endo』
そんなこと…あるのか?
本当に…あの、希なのか?
一瞬でまた、あの夏の15の俺に戻ってしまった。
固まったまま動かない俺に、瀬川が
「おい、影山!影山ってば。」
「…えっ?あぁ…何だ?」
「どうかしたのか?」
「…いや、何でもない。炎天下の外から戻ってきたばかりだから…熱中症にでもなったかな。」
「おいおい、気を付けろよ。大丈夫か?」
「…大丈夫だ。ありがとう。」
少しフラつきながら自分の席に戻った。
あの時の希の泣き顔が頭から離れない。
頭が割れるように痛む。
会いたいような会いたくないような。
でも会って謝らなければ。
そのことしか頭に浮かばない。
全く集中力を欠き、午後からは仕事が手に付かず、俺は体調不良を理由に早退した。
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