11 / 1000
第11話
帰宅に合わせてタイマー設定しておいた部屋はまだエアコンが作動しておらず、むわっとした空気に息が詰まりそうになり、慌てて急速冷房に切り替えた。
冷房が効き始めるまで、とりあえずシャワーを浴びる。
汗でベタベタした身体を洗い流した後、冷蔵庫から冷えたバドワイザーを取り出し半分程一気に煽る。
やっと人心地付いてボトルを持ったままソファーにもたれ掛かると、あの掲示された辞令を思い出した。
『遠藤 希』
確かにはっきりとそう書いてあった。
何かの間違いなのか?
全くの同姓同名の赤の他人なのだろうか?
いずれにせよ、明日にはその『遠藤 希』なる人物が俺の上司として出社する。
他人なら、そのまま上司として迎え入れる。
でも
もし、あの希ならば…
俺は平静を装うことができるのだろうか?
それよりもまず…
俺はアイツに謝らなければならない。
その謝罪を受け入れてくれるのだろうか?
俺に気付いて、大勢の前で罵声を浴びせられるのだろうか?
責任を取って退職?
それも仕方ないか。
それだけのことをアイツにしでかしてしまったのだから。
大きなため息をついてボトルの残りを飲み干すと、もう考えるのを止めてベッドへと向かった。
ともだちにシェアしよう!