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第11話

帰宅に合わせてタイマー設定しておいた部屋はまだエアコンが作動しておらず、むわっとした空気に息が詰まりそうになり、慌てて急速冷房に切り替えた。 冷房が効き始めるまで、とりあえずシャワーを浴びる。 汗でベタベタした身体を洗い流した後、冷蔵庫から冷えたバドワイザーを取り出し半分程一気に煽る。 やっと人心地付いてボトルを持ったままソファーにもたれ掛かると、あの掲示された辞令を思い出した。 『遠藤 希』 確かにはっきりとそう書いてあった。 何かの間違いなのか? 全くの同姓同名の赤の他人なのだろうか? いずれにせよ、明日にはその『遠藤 希』なる人物が俺の上司として出社する。 他人なら、そのまま上司として迎え入れる。 でも もし、あの希ならば… 俺は平静を装うことができるのだろうか? それよりもまず… 俺はアイツに謝らなければならない。 その謝罪を受け入れてくれるのだろうか? 俺に気付いて、大勢の前で罵声を浴びせられるのだろうか? 責任を取って退職? それも仕方ないか。 それだけのことをアイツにしでかしてしまったのだから。 大きなため息をついてボトルの残りを飲み干すと、もう考えるのを止めてベッドへと向かった。

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