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第12話
よく眠れないまま寝返りを打ち、ウトウトしかけては何度も目が覚めた。
その間に見る夢は、希の笑顔と…泣き顔。
ごめん、ごめんな、希…俺はお前のこと…
うわ言のように何度も何度も繰り返す。
やっと空が白々と明るくなり、俺の長い夜が終わった。
ごそごそと布団から抜け出して、熱めのシャワーを浴びたがすっきりとはしない。
何気に鏡を見ると、青白い顔が写っていた。こんな顔で出社なんて、最悪だな。
食欲も湧かず、滅茶苦茶濃いコーヒーを胃に流し込み、無理矢理 脳を働かせ目を覚まさせた。
気分の乗らないまま洗面を済ませるとスーツに着替え、重い足取りで出社した。
今日はもう仕事をしたくない。
いや、今日というよりも、もうずっと。
逃げ帰りたい。会いたくない。出社拒否だ。
溜まってる有休全部使い果たしたい。
課の面々が揃い始め挨拶を交わすものの、裁判の判決を待つような心境で、その時を待った。
俺の緊張はピークに達している。
背中にじっとりと嫌な汗が滲んでいる。
「おい、影山。お前、具合悪そうだが大丈夫か?昨日も早退してるだろ?」
「…あ、大丈夫です。ご心配いただいてすみません。」
ひそひそと小声で心配してくれる先輩に軽く手を挙げ丁寧に対応する。
傍目からもそんなに悪く見えるのか。
ぼんやりしながらドアを見つめていると、ノックの音とともに『その人』が入ってきた。
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