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第13話
希だ……
ふんわり柔らかそうな薄茶色の髪の毛と大きな目はそのままで…あの頃の希の面影があった。
『かわいい』を通り越した『イケメン』になって。
身長は俺より10センチは高いだろうか。
ガタイも俺よりしっかりしている。
十数年会わない間にすっかり大人の男に変貌してしまっていた。
俺が守ってきたあの希じゃない。
会えなかった年月が現実のものとなって降りかかってきた。
「初めまして。本社から参りました遠藤 希です。
不慣れなことも多いとは思いますが、皆さんにご教示賜りながら頑張りますので、どうぞよろしくお願い致します。」
みんなの拍手に照れ臭そうに微笑みながらも、視線を流していく…。
ばちっ と視線が合った瞬間、蛇に射すくめられた蛙のように、俺はその場から動けなくなった。
俺の愛想笑いが凍りついた。
怖い。
なぜか恐怖感しか浮かばず、全身に鳥肌が立った。
瞬時に血の気が下がっていく。
ヤバい…
目の前に映った壁がグニャリと曲がって、視界が斜めに横切っていく。
倒れる…
床に激突する寸前、誰かに抱き止められ耳元で「…斗真…」とささやかれたのを感じながら、俺は意識を失った。
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