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データ2~別れの回線~
-------早く開けてくれ!
--------熱い・・・!
--------苦しい・・・っ!
--------どうして・・・!?
何でこんな事が出来る!
俺の事はともかく、奴等だってウチのアンドロイドの価値はわかっている筈
多少面倒でも無傷で手に入れたいはずだ・・・
まさか奴等がここまでするなんて------!
俺の大事な家族(アンドロイド)を傷付(こわし)けやがって!
-------どうして放って置いてくれなかったんだ!
ただ俺達はあの家で静かに生きて居たかっただけ・・・!
それなのに・・・っ!!
--------許さない!!
俺は絶対にアイツ等を許さない!
このままで終わると思うなよ、この代償は必ず!
どんな事をしてでも支払ってもらうからなっ!
「-------オイ!聞こえるか!?ラン!死ぬなよ!絶対に俺達が助けてやるから!頑張ってくれ!・・・頼むから・・・俺達を置いて行かないでくれよ・・・っ!」
俺の側には傷を負った鳥型のアンドロイドに、執事と少年の人型アンドロイドがいる
この閉じ込められた空間に先程から呼びかけてくるのは
扉の外に居る猫型のアンドロイド・・
彼の声がこの部屋のスピーカーから聞こえてくる
「クソっ・・!まだ開かねぇのかよ!!?何してやがる!さっさとここを開けねーか!」
次に深い蒼色の瞳をした青年アンドロイドの声が聞こえて来た・・・
中々開かない扉に苛立ちの声を上げながら扉を殴り続けている
「ちょっと黙っておれ!お前に言われずとも今猛スピードでやっておるわ!」
電子ロックの開錠(かいじょう)に苦戦する犬型のアンドロイドが吼える
「ラン・・嫌だ・・嫌だよ!早く出てきてよ・・・っ!」
深い赤の瞳の青年が扉の前で泣き崩れる
「お願いだから早く開いて・・!」
メイドのアンドロイドが祈るように呟く
「ちょっと!何やってんのさ!早く開けてよ!このままじゃ藍機(らんき)兄さんがっ・・・クソっ!僕が外に居ればこんなのスグに開けられたのにっ------!」
俺の傍(かたわら)にいる少年が悔しそうに顔を歪めた
だんだん酸素が・・・
悔しいが俺もここまでか・・・
「っ・・・!もういいから・・お前達だけでも生き残る事を考えるんだ・・そして・・人間の俺が アンドロイドのお前達に こんな事を頼むのはいけないと分かってる・・分かってはいるが・・どうしても俺は、お前達を傷つけたアイツ等を許せない!だから、お前達はこの建物から出てアイツ等にキツイ罰を与えてやってほしい・・俺の変わりに・・頼む・・」
本当はここを生きて出て自分で奴等に復讐したいところだが
どうやら、それは無理そうだからな・・・
「嫌だ!嫌だ!藍機(らんき)兄さんを置いて行く事なんて出来るわけがないだろ!僕達は兄さんがいなきゃ生きられない!生きている意味なんてないんだ!」
少年の青い瞳からボロボロと涙が零れる
「大丈夫・・この広い世界を回ればきっと皆・・俺より良いマスターが見つかるよ絶対に・・だから・・俺がここで死ぬ事になっても、どうかお前達はこの先もまた自由に・・愛するものに出会える希望を捨てずに これからも・・この世界で生きていって欲しいんだ・・頼む・・幸せになってくれ・・俺は長い間お前達と一緒に過ごせて とても幸せだった・・俺の愛しいアンドロイド達・・結局最後まで人を愛せなかった俺に・・お前達が愛する・・喜びと・・愛される幸せを・・教えてくれた・・本当にお前等からは沢山のものを貰った ありがとな・・」
もう・・・頭が朦朧として自分が何を喋ってるかわからなくなってきた
頭が痛い・・耳鳴りも酷い・・
苦しい・・酸素が足りない・・
「待って・・待ってどうしよう・・駄目だ!どんどん脈が・・ああっ・・!どうしたらいいんだよ!・・早くここから出してよ!早く扉を開けて!!藍機(らんき)兄さんが本当に死んじゃうよ!嫌だ嫌だ!怖い!」
扉の向こうに声が届かないと わかっていても
ゆっくりと死に向かっていくマスターを目の前に
少年はこの部屋で叫び続ける
「------ランちゃん、余り喋らないで・・酸素の減りが早いわ・・」
鳥型のアンドロイドが自分の体内に有る酸素を紫色の瞳から涙を流しながら送り続けている
「泣くな・・ごめんな・・もういいからお前達は自分の体を守れ・・俺の為にそんなに体を冷却モードにしていたら予備電力もスグに無くなっちゃうぞ・・酸素も・・もういいから・・お前達は扉が開くまで頑張るんだぞ・・」
「嫌だよ・・藍機(らんき)兄さん行かないで・・僕を置いていかないでよ・・ずっと一緒にいる・・側に居てよ・・」
少年は泣きながら離れまいと強く俺に抱きついた
「藍機(らんき)様・・貴方がこの世界から居なくなるのであれば 私共も一緒にいきます・・貴方なしでは生きられません・・私共はそういうアンドロイドです・・貴方の幸せこそが・・私共の幸せでございます・・どうか・・最後まで・・私達の機能が停止するまでは・・生きる事を諦めないでください」
俺の体を横抱きにして座っている執事のアンドロイドも涙を流しながら俺を見下ろしている
「いいんだ・・俺は・・もう、自分で分かる・・ここが俺の最後だと・・俺も・・そろそろ家族に会いたいしな・・だから・・頼む・・外の連中にも伝えて欲しい・・あいつ等の声はこっちには聞こえてるけど・・こっちの声は聞こえてないみたいだからな・・さっきの俺の言葉を・・お前達を愛している事と・・この先も生きて幸せになる事・・頼む・・ちゃんとここを出て伝えて欲しいんだ・・」
「嫌です・・お断り致します・・ここを出てご自分の口から伝えなさい・・彼等だってその方が喜ぶでしょうからね・・」
俺の唇を指でなぞりながら執事は答えた
「お前は・・本当に昔っから俺の言うこと聞かないね・・せめて最後ぐらいは聞いてくれよ・・俺一応お前のご主人様なんだけど・・」
「はい、分かっておりますとも・・ですが貴方のお父上から教育を任されていますので・・貴方の方が教育者であるの私の言う事を聞かねばならないのですよ・・だから・・必ず生きなさいわかりましたね」
「なんだそりゃ・・まったく、主人の言うことを聞かないアンドロイドなんて・・世界中探してもお前達ぐらいだぞ・・・・特にお前な・・」
頭が痛い・・
なんか・・声が遠く・・・
「まさか、最後の最後まで・・この・・・・する・・こ・・と・・・に・・・--------------」
「・・・藍機(らんき)様?・・・聞こえません・・藍機(らんき)様・・・何か言って下さい・・・らん・・き・・・・・・・-------ああ・・もう、私共を置いて・・ご家族のもとへ逝ってしまわれたのですね・・貴方の方こそ・・昔から私の言う事など全く聞かないじゃないですか・・自分の感情の赴(おもむ)くままに行動なさって・・何度私達は厄介事に巻き込まれた事か・・・それでもね・・そんな自由に生きている貴方が・・私達は大好きでしたよ・・・・・・っ・・・!申し訳・・ございません・・貴方をお守りする事が・・出来ませんでした・・・っ・・貴方がた家族にこんなに大事にしていただいたのに・・何て不甲斐ないアンドロイドなのでしょうね・・・私達の存在は、ただ貴方達家族を不幸にしただけでした・・なのに・・貴方は私を・・私達を最後まで愛していると・・言って下さった・・もっと、貴方と共に・・貴方の側で生きていたかったです・・ですが・・もう・・それは叶わないのですね・・藍機(らんき)様・・今まで私達を愛してくださり有難うございました・・後の事は私共にまかせて、どうぞ安心して おやすみ下さい・・」
暫くして扉が開き 外にいた他のアンドロイド達が駆けつけた時には 意識があったのは私ただ一人だけだった
扉の外にいたアンドロイド達が涙を流しながら
彼の名を呼び続け、話しかけているが
マスターは肉体だけを残して逝ってしまった・・・
もう、この体には彼の魂は入っていないのですね・・・
私と一緒に閉じ込められいた2体のアンドロイド達は
マスターが逝ってしまう少し前から耳と目以外の機能がほぼ停止していた
私とマスターが話している間も彼を見詰め続ける2体の瞳からは涙が止まらず流れていた・・・
マスターが息を引き取った直後は、彼を失った悲しみに耐え切れず
私に自分の残っているエネルギーを全て渡し
マスターの後を追っていってしまった・・・
こんな事になるなら私も他のアンドロイド達のように早く言っておけばよかった・・・
今更 後悔しても、もう私の言葉は彼には届かない・・・
今まで一度も口にしませんでしたが
藍機(らんき)様・・私も・・
貴方を愛していたのですよ・・・。
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