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朝陽 4

朝稽古の帰り、道着のまま父の使いで寺に寄った。 老住職は奥さんと病院に行く日なので今日は恵果さん一人の筈だ。 なのに玄関を開けると奥から声が聞こえる。 猫の子の鳴くような声。 知っている、これはあの人の身体から発せられる甘やかな鳴き声だ。 足音を立てないように僕は声のする方へと向かった。

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