57 / 124

朝陽 28

言いさしたまま恵果さんの瞳が震えている。 望みがあるのは僕の方です。 (僕は貴方が欲しい) 握りしめていた指先から力を抜いて、そのまま両手を広げ掌で肩を押した。 あっけない程軽い力で恵果さんは背中から倒れた。 もの言いたげな双眸を見下ろしながら、僕は次の言葉を探しあぐねていた。

ともだちにシェアしよう!