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第3話「朝食」

 はあ、いつまで寝てんだ?  疲れてんのはと思う。部活帰りに「勉強教えて欲しいです」なんて殊勝な事を言うと思ったら、手取り足取りどころじゃねえ、こっちの腰とって離さない。  お前は蛇かってくらいのねちっこさ……まあ蛇は二十四時間通して絡んで生殖活動し続けるらしいからそれよりはマシ……違う、頭湧いてるぞ俺。  目の前で腹出して、口開けて涎たれている馬鹿の顔見ていたら、腹立ってきた。なんでお前が俺のベッドの真ん中で偉そうに寝てんだよ。  「いってえ、先輩、何も蹴っ飛ばさなくてもいいんじゃないですか?」  「飯食え」  「俺、朝は食わないんで」  「誰が作ったと思ってんだ。食え、飯ちゃんと食わないから、いつまで経っても背が伸びねえんだよ」  「俺はポイントガードだから別にこのくらいでも十分ですよ、先輩はセンターだからひょろ長くないとだめですけどね」  「あ゛、今何っつった?ひょろ長いって言ったろ?お前、馬鹿にするにもほどがあるだろ!」  こいつが転校してきてから、調子は狂いっぱなし。年上としての余裕を見せたいのに上手く行かない、選挙権だけもらったって大人になんかなれないんだ。大きな欠伸をしながら、溝内が笑った。  「先輩、手足長いですもんね」  「だからなんだよ、また蜘蛛みたいって馬鹿にするんだろ」  「え?俺がいつ?」  「言ったろ、この前蜘蛛みたいだって」  「可愛いな、気にしてたんですか?蜘蛛の巣に絡め獲られた獲物みたいって言ったんですよ。それに、先輩は蜘蛛じゃなくて獲物の方ですよ、もちろん」  「え……」  「美味しそうですね、先輩。ああ、朝飯って、言ってましたっけ?今日は部活休みですし、いただきます。でも、俺のも、ほら寝起きで元気ですから、先に先輩をいただかないと」  手を掴むとさっき出たばかりのベッドに引き戻される、朝食に食うはずのトーストはテーブルの上だ。落としたばかりのコーヒーと一緒に置き去りだ。  「いただきます」  何故か手を合わせてて溝内は丁寧に頭を下げると、口の中に自分の舌を捻じ込んできた。これ噛みついたらどんな顔するのかな。   ※「転校生」より溝内×近藤

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