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5. Stay with Me 5

「え、ええ? も、もしかして」 恐る恐る歩み寄っていくと、七瀬くんが瞳を輝かせているのが裸眼でもわかった。 七瀬くんは俺の全身を上から下まで舐めるように眺めて、最後にあそこに目を留めてまじまじと確認してから、花が開くように顔を綻ばせた。 「リイくんの彼氏?」 違います、下僕です。 もじもじと所在なく視線を泳がせる俺とは裏腹に、七瀬くんは満面の笑顔で飛びつかんばかりに李一くんの手を取った。 「わああ! すごいすごい! リイくん、よかったねえ」 いや、こんな冴えない俺が李一くんの彼氏とか、どう見てもありえないでしょ? てっきり全力で否定されるかと思ったけど、李一くんはそんな七瀬くんを微笑みながら見つめるばかりだ。そりゃそうだ。こんなに喜ばれてしまうと否定しにくいよ。 「邪魔してごめんね。俺、帰るっ」 え? 用件は? 「七瀬」 扉を開けようとしていた七瀬くんが振り返る。李一くんは、すごく優しい笑みを浮かべながら口を開いた。 「ありがとう。気をつけて」 「ううん。家、すぐそこだし平気。また来るねっ」 学校一変態だけど学校一かわいいと噂される顔が、照れたようにはにかむ。 ああ、そうか。 七瀬くんは、雷が鳴ってるから李一くんのことを心配してここまで来たんだ。 それに気づいた俺は、李一くんに心を開くことのできる友達がいることに安堵する。 その反面、俺の胸はほんの少し痛んでしまう。もしかしたらこれは、李一くんのことを俺よりも知ってる七瀬くんに対する小さな嫉妬なのかもしれなくて、そんな自分の浅ましさに我ながらびっくりしてしまっていた。 七瀬くんが帰ってからもう一度二人でベッドに入った途端、一段と大きな雷の音が鳴り響いた。 さっきよりもこっちに近づいて来てるような気がする。空が光る度に、手を伸ばせば届く位置にいる李一くんの身体がピクリとわななく。 そんな姿を見ているとかわいそうで、俺はなけなしの勇気を出して少しずつ距離を詰めていった。 こちらに向けられた小さな背中は、華奢で頼りない。 「李一くん」 声を掛けて後ろからそっと包み込むように抱きしめれば、腕の中の身体がもぞりと動いた。あったかくて気持ちいい。 「何だよ」 「あの」 俺はただ、安心させてあげたくてつい抱きしめてしまっただけなんだけど。でも、李一くんの抱き心地は極上で、ずっとこの体勢でいられる理由を何とか探そうとする。 「あの、セックスしようか」 どうしようどうしようと考えているうちに、なぜだか口をついて出た言葉が、よりによってそれだった。

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