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6. the Way You Are - side K - 8
「………ッ、は、んン……」
呼吸の整わないままに口づけて舌を絡ませる。ふたつの部分で繋がっている感覚を味わいながら、俺は七瀬の全てを貪り尽くしていく。
そっと唇を離せば、涙目で俺を見下ろしながら七瀬はポソリと呟いた。
「カイくんのこと好き過ぎて、死にそう」
「アホか」
脇の下に手を入れて、きゅう、とまだ名残惜しそうに締めつけてくるその部分から半身を引き抜けば、七瀬はくすぐったそうな喘ぎ声を漏らした。
「あん、カイくんの精子、熱いよう」
「言うなって」
セーシ、サイコー! とバカなことを口走りながら後処理を終えた七瀬は、体液でドロドロになった女子高生の制服を脱いで本来の制服姿に戻る。
こっちの方が断然しっくりくる。
安堵する俺の顔を見ながら、七瀬は珍しく遠慮がちに口を開いた。
「カイくん、やっぱり女の子の方が好き?」
突然そんなことを訊かれて、俺は言葉に詰まる。けれど七瀬はごまかしを許さない大きな目で俺を真っ直ぐに見つめてくる。
後夜祭が盛り上がっているのだろう。遠くで喧騒が聴こえる。
「だって、なんか今日、いつもより優しかったし……俺の精子、飲んだりとか」
そこをはっきり言うなって。
女の子の格好をしている七瀬は確かにかわいかったと思う。それは七瀬自身がかわいいからで、服装や化粧はもはや関係ない。
「俺、女の子にはなれないからさ。でも、女の子の格好なら、できるし。カイくんがその方がいいって言うなら」
七瀬の言わんとすることに気づいて、胸が痛くなる。
女の子がいいと俺が言えば、こいつは毎日でもこんな格好をして外を出歩き、俺につきまとってくるんだろう。
だけど、俺はそんなことは望んじゃいない。むしろそれでは困るんだ。
「俺は別に女の子が好きってわけじゃなくて」
いや、かと言って男が好きというわけでは断じてない。何と言えばいいかわからなくて口を閉ざせば、すっかり陽の落ちた教室に沈黙が降りてくる。
固唾を呑んで次の言葉を待つ七瀬に、俺はようやく捻り出した言い回しを口にした。
「そのままのお前が一番いいよ」
「……本当?」
そう言って七瀬は満面の笑みを浮かべる。その顔がかわいくて抱きしめたい衝動に駆られながら必死に理性で抑えていると、案の定向こうから飛びついてきた。
小柄な身体を抱きとめると、耳元ではしゃいだ声が聞こえる。
「よかった! スカートって、結構スースーして落ち着かないんだよねっ」
さっきのコンテストの間、他の男共がどんな目でお前を見てたか知ってるか?
お前が女の子の格好をして歩き出した日には、俺は心配で夜も眠れない。
窓ガラスの向こうで、皓皓と炎が上がっているのが見えた。
クレンジングで顔を洗った七瀬が、サッパリした表情で教室に戻ってくる。
ああ、やっぱりその方が七瀬らしいなと思う。
「わあ。ファイヤーストーム、始まってる! カイくん、一緒に行こう」
そう言って手を取ってくる。繋いだ手は、ほっこりと温かい。
男とか女とか、関係なくて。お前だから好きなんだ。
そんな言葉を、いつか口にできる日が来るんだろうか。
俺は暗い教室を後にして、七瀬に導かれるまま光の見える方へと向かう。
the Way You Are - side K - end
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