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第11話
そして、受け入れられた想いは、更に予想もしなかった結果を産んだ。学から「付き合うか?」と言われたのだ。「さすがに、この前みたいなのは…すぐには無理だけど。俺もお前のこと嫌いじゃないし、交際前提の友達付き合い?みたいなさ」と、旭の気持ちに応えたいと言ってきた。
学の優しさに付け入っている気がしたが、断る理由は旭になかった。そして、地獄みたいな日々が、まるで以前の幸福に満ちた日々へと戻っていった。学の部活や稽古がない時に、一緒にいることが増えた。旭がこれまでのことを取り戻すかのように、映画やショッピングに誘うと、「ベタだな」と笑われたが、少し恥ずかしそうにしている学にとても嬉しくなった。暫く、以前のような友達関係が続いた。恋人らしいことはなかったが、少しでも自分のことを学が気にしてくれていることに旭は満足だった。
そして、旭が高校2年生になり、2回目の夏休みになった時、あの公園のベンチで初めて手を繋いだ。触れるだけのキスを許されたのは、夏休みが終わる少し前だった。
嬉しくて仕方がなかった。まるで、常に浮いているような、ふわふわとした感覚だった。しかし、学は高校3年生になっていた。受験生だった。
夏休みで部活を引退した学は、受験勉強に励んでいた。今まで部活だった時間は、学の部屋で一緒に勉強をする時間となった。
「がっくん、どこ受験すんの?」
「んー、正直悩んでる。空手部があって、経済学部ってのは決まってるけど、どうっすかな」
「じゃあ、S大学?」
「志望校ではあるな。てか、お前もちゃんと勉強しろよ。さっきから手ェ動いてないぞ?明日、英語のミニテストなんだろ?」
「俺…英語圏には行かないから、いいし…。がっくん、見てる方が楽しい、イテッ」
「俺がやりづらいっての。来年困るんだから、今、ちゃんと勉強しとけよ?お前、俺より頭良いんだしさ」
センター試験の赤本で軽く叩かれた額を摩りながら、旭は机の上に突っ伏した。
「来年か…。また、1年会えなくなるんだね…」
「学校では、だろ?別にそれ以外なら、普通に会えるだろ」
何でもないことのようにさらりと言われて、旭は突っ伏したまま、悲しそうに眉を下げた。自分の方が相手を好きなのはどうしようもない。けれど、まるでそれをはっきり示されたみたいで、気持ちが揺れる。
「がっくん…キス、してもいい…?」
わざと甘っ垂れた声で呟く。
「っ、…」
「がっくん…」
学が、この声に弱いことを旭は最近知った。
「…したら、ちゃんと勉強しろよ?」
「うん」
机を挟んで、そっと学と口づける。このまま、幸せな時間がずっと続けばいいと、柔らかな学の唇を感じながら、旭は思った。
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