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第12話

 学の受験勉強も本格的になり、徐々に会う時間が少なくなっていった。学からも『暫く勉強に専念したい』と告げられた。昼休みも一緒に過ごしたいのを我慢して、旭もなるべく学の勉強の邪魔にならないようにした。  3学期になって、学の受験も目前の昼休み。クラスの男子2人と学食で食事をしていた時だった。 「高橋さ、最近、小野山先輩のとこ行かねぇな?」 「そりゃ、ピリピリしている中には、行きたくないよなぁ」 会いたいのを我慢している自分の気持ちなど関係なしに言われて、旭はムスッとした顔で答えず、カレーライスを掻き込む。 「俺たちも来年はあんな感じになるんかぁ~。すっげぇやだ」 「そういえば、小野山先輩、どこ行くんだ?やっぱりS大学?この辺で空手部が強いのはあそこだろ?」 中学まで同じ空手部だった山本が、ラーメンを啜りながら問いかけた。すると、隣でスタミナ丼とミニうどんを食べる、現役の空手部である飯田が答えた。 「いや、第一はC大学だってよ。この前、言ってた」 その言葉を聞いた瞬間、旭はスプーンを落とした。驚いて固まる。 「え?知らなかったのか?」 「…聞いてない」 「マジで?仲良いから、てっきり聞いてんだと思ってたわ」 知らなかった。 C大学は都内にあり、地方である自分たちのいる県からは、通っていくことは難しい。つまり、その大学が受かれば、学は必然的に実家を出ることになる。 大学へ行ってしまっても、学校以外では会えると言っていたのに。そんなに遠くへ行ってしまったら、すぐには会えなくなってしまう。  旭には、ショックだった。 もちろん、学の将来を決める大切な問題だから、本人の希望を一番に考えるのが大切だと分かっている。けれど、学にとっては、旭と離れることは、それほど悲しくないのだろうか。自分のように、一緒に居たいとは思ってくれていないのだろうか。 少しずつ感じていた不安が、大きくなる。 ―――やっぱり、がっくんは同情で付き合ってくれてたのか。 (がっくんは、優しいから…)  手も繋いだ。キスもした。けれど、求めるのは旭からばかりだった。好きになったのは自分からだから、それは仕方ないと思っていたし、付き合ってくれたのも奇跡だった。それでも、学も少しずつでも自分に対して恋愛感情を抱いてくれているのだと思っていたのだ。だから、学が自分と離れがたく思わないことが不安だった。 (もしかしたら…がっくんは俺から離れたいの…?) 同情で付き合ってくれているなら、今の関係を区切りのいい高校までで終わりにしたいのかもしれない。思い至った考えに、旭は愕然とし、今まで浮き足立っていた感情が一気に消えるのが分かった。  

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