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第15話
そっと出された手のひらに、第二ボタンを置かれる。開きたくなくて、ぎゅっと手を握りしめると、カチッと何か固い物がボタンに当たる音がした。
「…?」
そっと開く。そこには、思いもしなかった物があった。
「……これ…?」
「新しい家の鍵だよ」
ボタンの横には、銀色に光る小さな鍵があった。
「今は、一人暮らし用だから狭いけどさ。好きに遊びに来いよ。それと、来年は、もっと広い部屋にしようぜ?」
学の言っていることがすぐには理解出来ず、旭はただその鍵を見つめていた。すると、ぐいっと開けた学ランから覗くワイシャツの胸ぐらを掴まれた。学の唇が、旭の唇を軽く塞いだ。
「…離れて寂しいって思うのは、お前だけだって思うなよ?」
はじめての学からのキスに、旭は驚いて、目を見開いた。
「…っ、がっくん…」
ようやく相手の言わんとしていることが分かって、ガバッと学をきつく抱きしめた。
「…大好きっっ!」
旭は大粒の涙を零した。
これは、嬉し涙だ。
「……知ってるよ、バカ」
end
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