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第14話

ガラッと、美術室の扉が開いた。 「やっぱり、ここか」 後ろを振り向かなくても分かる。学だ。 「お前、式出なかっただろ?」 学が近づいてくる。いつも通りの振りをしてきたけれども、卒業式にはどうしても出られなかった。最後の抵抗だった。 「なあ、お前に渡したい物あるんだけど?」 零れた涙を学にバレないように手で拭い、椅子に座ったまま振り返った。すると、学の学ランの第二ボタンが取れていることに気づいた。旭は青ざめて、息を飲んだ。 「…っ、ボタン…あげたの…?」 「ん?…ああ、これな。お前にやろうと思って、取っといたんだよ。お前、欲しいとか言ってただろ?」 卒業証書の筒を左手に移し、学はズボンのポケットから金色に光るボタンを取り出した。そういえば、中学の卒業式の前に、冗談半分で言ったことがあったと思い出す。そんな前のことを覚えていてくれたことが嬉しかった。 けど、本当に欲しいモノはそんなものじゃない。 「旭。手、出せ」 でも、せめて、学の一部でももらえたら、サヨナラを言えるだろうか。

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