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あー、なんかムシャクシャすんな。
隣に寝てる女を起こさないようにベッドを抜け出す。
何人の女と付き合っても、何人の女と寝ても忘れられないでいる。
高校生の時、若気の至りで付き合ったアイツ。
顔も、名前も、何もかも大事な部分はすべて忘れているのに、なぜだろう…
体がアイツを求めている。
そして心も…
昔から何かとモテた俺は女を取っ替え引っ替え遊んできた。
それを咎めるやつもいなかったし、むしろ女の方から遊んでほしいと寄ってきた。
1番じゃなくて、2番や3番でもいいなんてぬかしやがるからそれなら…って、体の関係だけだったやつもたくさんいる。
そんなある日、告白された。
いつもの女達とは違う告白。
体目当てでもなく、俺の顔目当てでもない。
そいつは、俺の中身が好きだと言った。
いやいや、俺お前のこと何も知らねぇし、お前も俺のことなんか何も知ってるわけねぇじゃん。と思うのに、なぜだろう…俺は受け入れていた。
付き合うことになったが、なんかおかしいな…と確認してみると男だというじゃねぇか。
男…
男同士ってそもそも付き合ってどうすんだよ。
エッチなこともすんのかな?
なんだそれ。なんか吐きそう。
元々女好きで、エッチなことも大好きだけど、男とそんなことをする趣味はねぇ。
そう思っていたのに…
ある日、俺が学校から帰ろうと下駄箱で靴を履いているとアイツが雨宿りしていた。
『あー雨降ってんだ…なに?傘ねぇの?』
俺が後ろからそう聞くと肩をビクつかせながら頷いた。
『入ってく?』
たまたま置き傘ってか前に忘れて帰った傘があったので、入るか?と聞いたら真っ赤な顔でソイツは頷いた。
『なぁ…なんでそんなに離れてんの?せっかく傘に入ってんのに濡れるじゃん。』
『あっ…ごめんなさい…』
そう言って遠慮がちにこちらに寄ってくるソイツにイライラして手を握り、こっちにグッと引き寄せた。
トンッと肩がぶつかると体全体をビクつかせ、俯き加減に歩き続ける。
『あのさぁ、お前から付き合って下さいって言ってきたのになんなわけ?恥ずかしいの?』
無言でコクリと頷く。
『なぁ…俺と付き合って何したいの?』
『何って別に…』
『大抵寄ってくる女は俺の体が目当てなんだけど…』
『僕は一緒にいれればそれで…』
なんだよそれ…
初めて言われる言葉にドキリとする俺。
まぁ、言われ慣れていない言葉に驚いただけだろうと気にせず歩き続ける。
『お前んちどこ?』
『この先をもう少し歩いて右に曲がって…』
『ああー。もういいや。俺んちここなんだけど。』
『あっ…すみません。じゃぁ僕はここで…ありがとうございました!!』
なぜだか俺は居ても立っても居られず、そう言って走り出そうとするソイツの腕を掴んだ。
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