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第12話

『ガチャリ』  玄関の開く音と同時に蓮さんの声、それから知らない女性の声が二つ。  それだけでも嫉妬の炎が胸の中で燻っているのに、仲良さげな声でさらに黒いものが広がる。…蓮さんはそんなことに気づくはずもない。  そっと玄関へ視線を向けると、綺麗な黒髪を持つ女性が蓮さんに抱き着いていた。 「なッ!?」  文句を言ってやろうとソファから立ち上がると、それに気付いたらしい蓮さんは二人に声をかけてリビングへと連れてくる。 「…お前ら、来るなら来るって連絡しろよな。」  言葉は困った様な感じだが、どうやら嬉しそうにも聞こえた。…綺麗な人に会いに来られてデレデレしてる…見たくないな、と内心呟きながらも蓮さんとは離れたくなかった。 「だって、サプライズ!!って感じで驚かせようって思って?」 ふふっと小さく可愛らしく笑みを零すのは先程の黒髪の女性ではなく、明るい茶髪の女性だった。…二人とも蓮さんと同じぐらいの歳かな?綺麗な大人の女性って感じで、…蓮さんと並んでも劣らない。 「あれ?お客さんが来てたの?…って、学生?」  俺がじっと見つめていたのに気付いたらしくい黒髪の女性は、制服を着ている俺を不思議そうに見つめていた。俺はその視線に困ったように、そして助けを求めるように蓮さんを見遣った。 「嗚呼、俺が受け持っているクラスの生徒で、新谷海斗。海斗、こっちは桜=バルディで天音の奥さんな。んで、こっちは椿 樹里で、桜の親友的な感じだな。」 「的なって何よ!親友ですー、ね!桜。」 「んー、そうかもねー。」  クスクスと小さく笑う桜さんは天ちゃんの奥さんかー…とじっと見つめていると、小さく笑みを浮かべたままこちらを見た。 「蓮のクラスってことは、天音も知ってる?」 「え、あ、はい。天ちゃん…じゃなくて、天音先生には相談に乗ってもらったり、…あとは、あ!ココア、ココア淹れてもらったりしてます!」  あたふたしながら話しては、自分でも何を話してんだろうと思いつつ、下を向いてしまった。 「天が相談に乗ってるの?…ちゃんと先生らしいことしてんのね。」  少し驚いた様子の桜さんの言葉に小さく笑みを零れた。そんな会話をしていると、蓮さんは携帯を持って、「天音に連絡してくる。」と言って、リビングから出ていった。  この二人の中に残されることに少し焦るが、出ていってしまった蓮さんの後ろ姿を見遣ると、樹里さんと呼ばれた茶髪の女性からじっと見られていることに気付いた。 「…ねぇ、新谷くん、だっけ?今から四人で話がしたいんだよね。…分かってくれる?」  にっこりとした笑み、表情だけ見ると、とても可愛らしい人だけど。その声は棘のある言葉…明らかに向けられる敵意に少し怖いと感じた。 「樹里、そういう風に言わないの。新谷くん、ゴメンね?」  桜さんは困ったように笑みを浮かべながら、謝ってくれた。「いや、大丈夫です。」と小さく呟くように言いながら、視線をそらした。  それから、特に二人と俺の間には会話はなく、二人で会話をしているのを聞くのも申し訳ないと思いつつ、どこにもいくことができない為、蓮さんをその場で待った。 「…樹里、ちゃんと仁に連絡した?日本に来てるって…。」 「うん!言わないと拗ねちゃうからね、うちのダーリンは!」  クスクスと笑いながら嬉しそうにする樹里さんの様子に結婚してるっぽいな、と内心呟きながら、どこか安心していた。…もしかしたら、樹里さんは蓮さんのこと好きなのかも?と考えていたからだ。 「…蓮にも新しい人、見つけた方がいいんじゃない?」  樹里さんは少し声のトーンを落として、心配そうな声音でそう言っているのが聞こえた。咄嗟に「俺が蓮さんの恋人です。」と声を大にして言いたかった。口を開きかけたその時、蓮さんの声と天ちゃんの声が玄関の方から聞こえた。

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