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第14話

side:R 「おい、桜!海斗に何言ったんだよ。走って出て行ったじゃねぇか、アイツ。」  天音はリビングにいる桜にそう声を掛けながら、奥へ進んでいく。桜はクスクスと笑みを零しながら、「お疲れ様、天。」とそう返した。桜の様子で、二人が話していたことが分かったらしい。 「話した俺が悪かったのか…。」  そう呟いて溜息を零した天音を見ながら、先ほどの焦った様子で出て行った海斗を思い出す。それと同時に、「なんで…」と呟いて、泣きそうな表情を思い出す。  ・・・俺は最近、あいつにあんな表情しかさせてねェな、と考えつつ、次に思い出したのは、天音に相談をし、「ありがとう」という言葉と同時に天音に向けた笑顔。  あれを見た時、駄目かもしれないと感じた。  大切な親友に向けた、愛しい人の笑顔にどうしようもない怒りを感じ、何故か、天音にぶつけてしまいそうだった。  ・・・本当に、余裕がないな、と自嘲を零すと、「蓮?」という声が急に耳に入ってきた。  はっとし、親友たちを見ると、心配そうに見られていることに気付き、「あ、悪い、悪い。聞いてなかった、なんだ?」と言いつつ、お茶でも用意するかと、キッチンへ向かった。  海斗にメールをいれて、話が終わってから電話しよう、と心の中で海斗へすぐに連絡できないことを謝罪した。 「お茶なんていいから、こっちに座って!」  少し怒ったようにこちらに声を掛ける樹里に「分かった、分かった。」とカップは出したままにリビングへ戻る。  桜と樹里が天音の正面に座っている。そのことに一瞬、疑問に感じつつ、空いている天音の隣に腰を下ろす。 「えっと…二人にご報告があり、ます。」  そう切り出した樹里の表情に、嗚呼、前も見たな、と内心呟くと同時に、心にあったはずのパズルの1ピースが欠けた気がした。 「仁、と結婚することになりました。」  少し照れた様子の樹里は、長い間付き合っていると言っていた彼との幸せな報告を告げた。桜はそれの報告を先に受けていたらしく、「やっと報告出来たね。」とクスクスと笑みを零し、天音は「おめでとう…ってか、仁さんに会ったことねぇな。」と同じく笑っていた。  俺も「良かったな、おめでとう。」と口では、そう言った。・・・表情も笑顔だったはずだ。  …心の中では、「また一人減った。」と呟きが漏れた。

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