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第15話

side:R  樹里の報告を聞いたその夜は、四人でお祝いと称して、俺の家で飲むことになった。三人は遠慮することなく飲み、一時を過ぎた頃に帰って行った。  そのことに少し有難いと感じつつ、見送った後、携帯を確認するが、海斗からの電話はなかった。・・・素っ気なくも感じるメールの文面を睨むと、更に酒を流し込んだ。  その無駄な作業も自分では止めることが出来ず、いつの間にか眠りに落ちることで止まった。  しかし、その眠りは長くはなく、すぐに目が覚めてしまった。・・・その上、眠りが浅かったのだろう、夢を見た。  天音は桜と幸せそうに笑っていた。俺はそれをガラス越しに見ていて、二人は笑顔で俺に手を振った後、背を向けて光の方へ向かっていく。樹里も同じく、幸せそうに笑って、背を向けていた。その後ろ姿を見ながら寂しいと感じるものの、・・・やっぱり、と諦めに似た感情も沸き上がる。  ガラスで囲われたその場所から動くことは出来ず、彼らを追うことが出来なかった。  すると、次に海斗が現れ、こちらに向かって何か叫んでいた。その声はこちらに届くことなく、聞こえない、と首を振ってみせると、海斗は泣きそうに顔を歪めて、ガラスの壁を必死に叩いている。その必死な彼に無理だと、またしても首を振る。じっと見つめていると、叫んでいる彼の口元に注目した。  ・・・彼は、『蓮さん』と何度も名前を呼んでいてくれた。  そんな夢を見たせいか、起きると、涙が止まらなかった。俺の幸せを願いつつ、離れて行った親友たち、必死に俺の名前を呼ぶ恋人、・・・俺は、そんな彼らに何も返せない。何もしてやれない、と昨日空いた心の穴を拡げる様に、自分で自分を責めた。  ・・・仕事までまだ時間がある、ベッドへ行こうと、寝室へ向かう。すると、ベッドには海斗のカバンが、壁には上着が掛かっている。そういえば、メールにもあったと思いながら、先ほどの夢を思い出す。  ・・・せめて、夢では海斗の笑顔が見たかった、最近、見れていない笑顔を記憶の中から引っ張ってくると、更に涙が溢れた。

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