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第1話

 穏やかな日々が続く今日この頃。季節は春、この店「Café&Bar Luce」がオープンして、そして俺が、旭アサヒ 玲一レイイチがオーナーとなってから1年が経った。なんとも濃い1年だったな、なんて考えながら、CLOSEになっていた看板をOPENへとひっくり返した。  『カランカランッ』と軽めで綺麗なドアベルを鳴らしながら店内へと入る。すると、大好きなあいつの顔が満面の笑みに染まった。 「玲!今日は朝から居る?」  すごく嬉しいという様に声をかけてくるこいつはファオロ=ジェリーニ。このルーチェのカフェ担当のシェフである。普通、シェフは表に出て接客はしないのだが、こいつは笑顔が全面に出て、人懐っこい性格をしている上にこいつ自身も接客が好きだったようなので、オープンキッチン形式にした。 「いや、上にいるよ。…ってそんなにしょげるなよ。」  俺の返答を聞き、明らかに落ち込むファオロにそう声をかけながら、小さく苦笑を零す。俺より少し上にあるファオロの頭を撫でてやりつつ、「頑張れるよな?」と声をかける。すると、ピンッと嬉しそうに立てる犬の耳が見えたのは俺だけじゃないだろう。その証拠にファオロの後ろにいるカフェ担当のウェイターである利人リヒトも小さく隠れて笑みを零していた。 「頑張るね!」  ニコニコとすぐに戻った機嫌に単純だなとクスリと小さく笑みを零しながら「んじゃ、また昼にな?」と2階にある俺たち2人の住居へと向かった。  朝早くに目が覚めた為、OPENの看板をひっくり返すのと朝の空気を吸う為に下りたが、どうやらまだ身体は睡眠を欲している様だった。ベッドに腰を掛けると、ゆっくりとそのままベッドへ寝転ぶと、沈んでいくのに身を任せ、目を瞑った。すると、ゆっくりと眠りにのまれていった。 ―――  俺とファオロが出会ったのは、以前、働いていたホテルのバーだった。ある日、ずいぶんと目立つ格好をしたファオロが来店した。  髪は同じ黒髪だが、とても艶があり、綺麗だと感じる漆黒の髪。店内は照明を落としていて、落ち着いた大人の雰囲気を醸し出しているせいできちんと瞳の色が認識は出来ないが、多分、ブルートパーズの様な綺麗な瞳の色だと思う。そんな彼はカウンターに居た俺を見ると、何故か固まってしまった。

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