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第2話
こちらからじっと見つめ、その上黙っているのは失礼だろうと、ニコリと控えめな笑みを浮かべた。
「お客様、こちらへどうぞ。・・・何に致しますか?」
自分の前の席を勧めながら、まず、ドリンクを用意しようとそう訊ねた。
『・・・って外国の方、だよな?日本語通じてんのかな?』
内心、相手が言葉を返してくれるかをひやひやしながら待つと、彼はようやく動きを見せ、勧めた席へと腰を下ろし、ニッコリと優しい雰囲気を感じさせる笑みを浮かべた。最初の第一印象ではキリッとし、少し冷たい感じなのかと思ったが、笑みを浮かべる彼は冷たさなんて全く感じさせず、むしろ反対に温かさが感じられた。
「うーんっと、俺のイメージで・・・なんて。」
特に最初の一杯が決まってないらしい彼は迷うそぶりを見せつつ、冗談っぽく少し笑いながら言った。
「ふふ、では私の勝手なイメージで作らせていただきますね?」
彼の言葉に小さく笑みを零しながらにこやかに対応してみせた。最初に惹きつけられた瞳の様なブルー系のカクテルを作ろうかと手を伸ばしかけたが、先ほど感じられた温かさをイメージしたカクテルを作ろうと、丸みを帯びたグラスを取り出した。最初の一杯目だし、男性ということもあって甘めは、と避けようとしたが、時間も時間だ。もうすでに食事も終えているだろうし、良くて1、2杯だろう、と思い、甘めへと変更した。・・・それに少し疲れているような気がした。
ベースにはテキーラを取り出し、温かい色・・・オレンジと単純に選び、オレンジジュースでそれを割り、グレナデンシロップを注ぐ。俺の手元を見ていた彼は少し驚いた様子であった。
「これ、俺・・・?」
グラスに注がれたテキーラ・サンライズを見つめながら、不思議そうな彼に小さく笑みを浮かべながら、それに合わせて頷いてみた。
「テキーラ・サンライズですが、こういった甘めのカクテルはお嫌いでしたか?・・・先にお伺いしておけば良かったんですが、つい・・・申し訳ございません。」
コトリと彼の目の前にグラスを置くと、首を傾げながら、少し肩をくすめてみせた。そんな俺の言葉にぶんぶんと勢いよく首を横に振る彼は、どうやら少し焦っている様に見えた。
「違う、違うよ!いつもというか一昨日、バーに行った時も昨日も、イメージで作ってくれたのは俺の瞳の色と同じ青系のばっかりだったんだ。それで意外だな・・・って。」
「最初は私もブルー系でスッキリしたものを、と思いましたが、先ほどからのお客様の様子であったり、笑顔であったり、なんだか温かく感じて・・・って、すみません!なんだか恥ずかしいことをつらつらと言ってしまって…。」
俺は思ったことをその時はつい、口に出してしまっていた。自分で言ったにも拘らず、頬が熱くなっていることに気が付いた。幸い、店内は暗い為、隠せているだろうと思いながら、先ほど取り出した酒などを所定の位置へと戻した。
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