1 / 15

第1話

「ぎゃぁ〜〜」 響き渡る野太い悲鳴。佐土 龍之介(さど りゅうのすけ)は少々いい面、名前負けする程、怖がりで、臆病なダメ男。 「うるさい!!」 驚かすため後ろから龍之介に抱き付いた。一喝する俺は、自分て言うのもなんだけど儚げで可憐な美少年なのだ。 茉央 千尋(まお ちひろ)好き嫌いが激しく、コミュ障で思った事をすぐ口にしてしまう俺。 「……ビビってんじゃねぇよ」 「え!? あ……ちーちゃん? 今…帰り?」 「あ……ババァがおまえん家で飯食わせてもらえって。つーかちーちゃんって止めろっていってるだろ」 「ちーちゃんって可愛いじゃん」 気怠い感じでのろ臭い話し方をする龍之介が、少々いい面をヘラっと緩めて笑った。俺はこの顔が嫌いなのだ。イラついた俺は龍之介から目を逸らした。 「あっそ! ってか早くドア開けろよ! 鈍臭せぇな」 「ごめん、鍵が見当たらなくて……」 「ったく、おばさんいんだろ? チャイム押して開けてもらえよ! あったま悪いなぁ」 「えへへ、そうだね」 そう……俺が幾ら毒吐いてもこいつはいつもこうで、俺をちーちゃんって呼ぶ奴は龍之介以外いない。幼稚園の頃、俺が揶揄って遊んでたのに、なぜか龍之介は俺に懐いていた。 俺はコミュ障でなかなか友達が出来ないが、龍之介のくせになんだかんだ友達が多い。 小学生からずっと仲のいい高田 順平(たかだ じゅんぺい)ことたかちゃんとよく喧嘩して、怖がりのくせに龍之介が半泣きになりながら間に入ってきていた。鈍臭い龍之介なのに生意気なんだ。

ともだちにシェアしよう!