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第15話
卒業式____
肌寒いこの季節は、始まりなのにどこか悲しくなるのはこのせいだ。桜の花びらが舞う校庭も学んだ教室も三年間着た制服も今日で最後。
俺は地元の大学に合格し、龍之介とたかちゃんも大学受かったって話は聞いた。
式はあっという間に閉式し、クラスでこの後ファミレス行く行かないの話で盛り上がっていた。
「な! 茉央達もいかね?」
「どうずっかな俺、参加で」
「マジで! 高田参加っと……で茉央は?」
「俺は……ちょっと遅れるかも知んねぇけど参加する」
「よし! じゃ駅前のファミレス集合ってことで、よろしく!」
「たかちゃん 後でな!」
「了~~解!」
龍之介どこだ!
龍之介を取り囲む女子達が見えた。俺はそこに向かって走ると、それに気付いた龍之介が逃げるように駆け出した。
「おい! 龍之介! なんで逃げんだよ!」
「だって聞きたくない!」
廊下を走る音が響く。龍之介が入っていった教室に俺も入った。
「はあ……はぁ……おまえ! ふざけてんのか!」
「……ごめん。分かっ…てる自分が言い出したことたがら…分かってるけど!」
俺は教室の床に座り込んだ龍之介に近付き座った。龍之介は、両手で耳を押さえ首を横に振る。その目の辺りに新しい傷痕を見付けそっと触れた。龍之介の動きが止まり、俺を不安そうな目で見る。
「痕残ったなやっぱり……」
「これは自分のせいだから」
「でもこれは俺が悪いだろ?」
「……そうだよ」
俺は龍之介の額の傷痕に触れた。泣きそうな顔をする龍之介の小さな傷痕に触れる。その度に俺がいつやった傷痕なのか聞いた。
他にも傷痕見せてと言うと、躊躇いながら龍之介はワイシャツを脱いだ。その一つ一つ傷痕の話を聞いた。
俺は……昔から……龍之介が好きだったんだ……
「ちーちゃん……?」
両手で自分の顔を覆う俺に不安そうな声で言った。
「ごめん……違うんだ。これ全部俺がつけた痕なんだって思ったらさぁなんかくるなって思って」
「それってどういうこと?」
俺は龍之介を抱きしめた。この身体が龍之介が愛おしくて仕方がない。
「こいゆーことだ」
「……分かんないよ。ちゃんと言って」
直接触れる龍之介の背中に腕を回しぎゅっとキツく抱きしめた。
「察しろよ」
「千尋……」
そうやって名前呼ぶとかずりぃー……
「龍之介、好きだ」
「……うっうっっ」
「なっ泣くなよ」
「だって…う…嬉しい……」
「泣くなって!」
「じゃキスしてくれたら泣き止む」
「調子にのるな!」
俺は顔を近付けてくるその顔を抓った。嬉しそうに拗ねる顔が可愛いとか思う日がくるとは……な……
「龍之介……」
「……え?」
俺は抓った頬にキスをする。龍之介が固まった。
「ちーちゃん!」
「こら! 調子に乗んなよ! 殴るぞ!」
「えっ! 殴ってくれるの!」
「急に変態全開にするな!」
その傷痕以上に君が好き……なんて今は言わないけどな!
【END】
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