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第119話
「そん、な」
「出すのは当然無理だけど、ドライでイってもだめだからね」
「や、そんなのむり……」
正和さんは俺の頭を撫でて優しく微笑んだが、そんなの怖いだけだ。仰向けになっている俺の膝を掴んで足を開こうとしたので、足を固く閉じて縛られた両手首を前に出し抵抗する。
「……足、開いて」
「や……許して」
正和さんは少しムッとした声で言うが、最後まで縛ったまま出せないなんて無理だ。解し終わる前にイかなければ良いと言われるだろうが、彼の事だからイくまで攻めてくるに違いない。
「純?」
できるよね、とでも言うような顔で俺の名を呼ぶ。涙目になって正和さんの事を見ると、ムッとしていた顔は優しく微笑んだ。
「仕方ない……キスしてあげようか」
「ん、ふ……んん、ぁっ」
口付けて中に舌を侵入させてくる。歯列をなぞり、上顎を撫で、巧みに舌を絡めて口腔を掻き回してくる正和さんの背中をぎゅっと掴む。
「はぁ、ん……んん」
唇がジンジン痺れて腰の辺りが蕩けるように気持ち良い。正和さんの唾液と混ざり合い、溢れ出したそれは口の端を伝ってベッドに落ちる。
体の力が抜けた頃、啄むようなキスを残して、唇が離れていった。お互いの唇を銀色の糸が結んだが、それはすぐに切れて俺の唇を濡らす。
「足、開いて」
正和さんに優しく言われて、これ以上何を言っても無駄だと悟った俺はおずおずと足を開く。わずかに膝を立てて、隠すように少しだけ内側に傾ける。
正和さんはそこに体を割り込ませると、長くて綺麗な指先で蕾をゆっくりと撫でた。
「いい子」
彼は蕾を軽く撫でた後、指を口元に持っていく。そのまま舌を出して、見せつけるように指の付け根から指先まで舐めた。
俺に流し目を送りながらその行為を数回繰り返す。溢れ出る色気を隠すことなく放っている正和さんに胸がドキドキと高鳴った。心臓が力強く脈打って耳元でドッ、ドッ、ドッ、と響く。
そのせいで白い肌はしっとりと汗ばんで艶やかさを増し、ほんのり赤みを帯びた。正和さんは十分に指を濡らすと、唾液で厭らしく光るその指で再びお尻を撫でる。
円を描くように入口なぞられて、誘うようにヒクヒクと収縮する。ツプンッとゆっくり中に入れられて、体がピクッと揺れる。足先に少しだけ力が入り、下半身が強張った。久しぶりだからか一本でも凄い違和感がある。
「……優しくゆっくりと、激しいのどっちが良い?」
内壁をなぞるように指をゆっくり回転させて、徐々に奥へ押し進めてくる。
優しくゆっくりの方が刺激にならなくて良いだろうか、それともゆっくりだと解すまでに耐えきれないだろうか。そんな事を考えるがどっちが良いかなんてわからなかった。
きっとどっちにしても、正和さんの良いようにされるんだろう。
「……正和さんの、好きに」
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