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第121話
「お願っ……も、無理、だめ、出るっ」
縛られた腕で正和さんの頭を押し、刺激から逃れるように抵抗したが、力の入らない体では何の効力もなさなかった。それどころか、正和さんは煽る手に更に熱を込めてくる。乳首を歯でカリッと噛まれると、目の前がチカチカした。
「正和、さ……だめ、や、あっぁ、あぁあん……っ」
恐ろしい程の快感と精液が逆流する感覚に体を震わせ涙を零す。後ろの指がズルリと引き抜かれると、電気が走るような感覚が全身を駆け巡って、体をビクビクと揺らした。
「もしかして……イったの?」
「っ……」
絶頂の余韻でぼーっとする頭に届いた声は鋭く、一瞬にして現実へ引き戻される。
「純、正直に答えて」
俺の名を低く落ち着いた声で呼び、強い口調で答えを促す。
「……い、いき、ました」
「へえ」
真っ直ぐ俺の顔を見て聞いてくる正和さんに震える声で答えると、その顔はニヤリと笑った。
「ごめんなさいっ……許して、許してください」
涙をポロポロ零して許しを乞うと、正和さんは考えるような素振りを見せる。
「……じゃあ、自分でもう一回イってごらん。ここ縛ったままで、ちゃんとできたら外してあげる」
そう言って男根につけられた革製の拘束具を撫でる。
「一回イって敏感だからイきやすいし、できるよね?」
「っ……」
出さないのにイくのは凄くつらい。刺激が強過ぎて頭がおかしくなりそうだし、精液が逆流してくる感覚は怖い。それを自分でやれとは、なんて恐ろしい事を言うのだろう。
「俺はどっちでも良いんだよ? だけど、二週間もくっついてないから今日はたくさんしようね」
それはつまり、自分でしないのなら、今日はこれから縛られたまま何度もイかされると言う事。変態で絶倫の正和さんに攻められたら無事でいられる気がしない。
幸か不幸か明日も休みだ。深夜どころか明け方までそんな事が続くと思ったらゾッとする。
「……触っても、良いの?」
「だめだよ」
勝手に触ったり、イったりしたらだめだと言われていたので、一応確認の為きいてみた。しかし、正和さんの答えは想定と違い、間の抜けた声が出る。
「え……じゃあ、どうしたら」
「さっきみたいに後ろと乳首でイったら良いんじゃない?」
「そん、な……」
眉尻は下がって、瞳にはじわじわと涙が溜まる。無理だと訴えるように正和さんを見上げると、その顔はニコリと笑みを浮かべた。
「もしくは、俺にお願いして許可をもらうか」
「おねがい……?」
「触りたいです、淫乱な俺を許して下さい。……うん、良いね。言ってごらん」
正和さんはニッコリ笑って俺の顔を見つめてきた。どうしてこう、次から次へと厭らしい言葉が思いつくのだろう。
言いたくないが、言わない事の方が怖いので、躊躇いながらも口を開く。
「さ、触りたい、です………いんらんな俺を許してください」
「声が小さい。やり直し」
顔を朱に染め正和さんから目線をそらして、蚊の鳴くような小さな声で言ったら、ピシャリとダメ出しされた。
「っ……触りたいです……淫乱な俺を、許して下さい」
「純って淫乱だったんだ」
「違っ――」
「違う? 思ってもないこと言ったわけ?」
言えと言われたから言ったんだ。そんな事を言われても困る。
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