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第139話

「券も十枚綴りの十枚もらったんだ」 「え」  桜氷高校の文化祭では事前に券を購入し、それを使って支払いをするようになっている。その券は当日、下駄箱前の廊下の受付で販売されるようになっているので、既に持っている事も不思議だが枚数にも驚く。  一枚百円だから十枚綴りで千円。それが十枚だから一万円。文化祭でそんなに使うだろうか。  まあ、学校に多大な寄付をしているんだとしたら、もっと貰っても良いくらいなのかもしれない。文化祭はクラスの出し物も全部、学校側から出された予算でやるし。 「受付が終わったら純はもう帰っちゃっても良いの?」 「ん、自由。片付けは休み明けだし」 「ふーん」  意味深長に笑みを浮かべる正和さん。 (……なんか怪しい)  ご飯を食べ終えた後は正和さんと一緒にお風呂に入ることになった。本当は恥ずかしいから一人で入りたいのだが、断るわけにもいかず流れでそうなる。  お風呂に入るのに男同士で恥ずかしいとか普通ならないが、相手が正和さんだとどうしても意識してしまう。今なら女の子と入る方が、平然としていられると思う。 「じゅーん。何考えてるの」 「っ……なにも!」  突然耳元で囁かれて、背筋がピンと伸びる。後ろから抱き締められながら湯に浸かっていたのが恥ずかしくて、気を紛らすようにぼーっと意識を逸らしていた。  正和さんはそれが面白くなかったのだろう。 「なにも?」  まるで『嘘つくんだ?』とでも言いたげな口調に少し焦る。 「だ、だって……ドキドキ、するから……」 「俺のこと意識してるの?」  正和さんはクスッと笑って嬉しそうな声で問う。  だが、好きな人と裸でくっついて意識しないなんて無理に決まっている。 「可愛い。……純がもう少し体力あればなあ」 「なんで?」 「もっとたくさん抱いてあげるのに」  そう言って正和さんの大きくなった中心をお尻に擦り付けられる。  今朝五回もした人が何を言ってるんだろう。それに付き合わされた俺は十分体力あると思うのだが。 「純」  耳元で掠れた低い声を出す正和さん。身の危険を察した俺は正和さんの腕から抜け出し立ち上がる。 「のぼせそうだから先出るね」 「……なんか、乳首大きくなった?」 「っ……」 (は? 何だよそれ)  俺は正和さんを無視して浴室から出る。体を拭いてパンツとズボンを履く。  さっき言われた事が少し気になって、鏡で胸を見ると確かに乳首が大きくなっていた。乳輪は変わらず、だけど先端はぷっくりと膨らんで存在を主張している。ショックだし、恥ずかしい。  正和さんもお風呂から出てきて、俺は隠すように慌てて服を着る。 「純。逃げないでちゃんと見せて」 「や、やだよ……」  正和さんは俺のお腹に手を回し、逃げられないように抱き寄せた。拭きもせず、水滴だらけの体で。 「ちょっと! 服濡れる!」 「じゃあまた着替えた方が良いね」 「何言って……やめっ」  そのままシャツを捲られて、じっくり観察するように見られる。 「やだ」  手で胸を隠すように押さえれば、その手は掴まれてしまった。

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