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第141話

「俺の言った事、忘れたの? 俺、前になんて言ったっけ」 「きょ、許可なく触ったりしたらだめって……」  震える声でそう言うと、正和さんは目を細めて俺の事を見る。 「へえ……。分かっててやったんだ?」 「っ……」 「イキたいなら乳首だけでイこうね」  正和さんは冷たい声でそう言って、パンツを履きシャツを羽織ると俺のことを抱き上げた。正和さんの部屋へと運ばれてベッドに下ろされる。 「や、やだ、なにそれ」 「何って……筆?」  彼は自分の手に持った物を見てそう答えると、クスッと笑ってベッドに乗り上げる。スプリングが(きし)む音が僅かに響き、後退りするが、すぐに俺の上に覆い被さった。  顔を近づけられて、肘で支えていた腕の力を抜いて頭をベッドにつける。そのまま顔を寄せられて、鼻が触れそうな距離まで近づくと正和の濡れた髪が頬に当たった。 「男なのに乳首だけでイくってどんな気持ちかな?」  正和さんはニヤリと笑ってそんな事を言う。 「し、知らない……」  その表情に胸がドキッと高鳴って、震える声でそう呟くのが精一杯だった。  正和さんは手に持った筆で俺の鎖骨をなぞる。そのまま下に滑らせて、円を描くように胸の先端をなぞった。 「ん、ふっ……くすぐったい……っ」 「くすぐったいだけ?」  正和さんは楽しそうに目を細め、筆先が触れるか触れないかギリギリのタッチで優しく刺激してきた。  筆を小刻みに動かして尖端を刺激し、その周りをゆっくりと円を描くように撫でる。それを繰り返されると、くすぐったかっただけのはずが、そこからゾクッと快感が走って息が上がった。  体を震わせてシーツを掴むと正和さんはクスッと笑う。 「はぁ……はぁっ、ん……これやだ、変……っ」  くすぐったさと僅かな快感。明確な刺激が欲しくて強請るように揺れる体は火照って、瞳には涙が滲む。  触られていない中心は下着の中で窮屈そうに先走りを零し、下着の中がヌルヌルして気持ちが悪い。 「ふ、ぅ……はぁ、ん……あぁっ」  時折、筆の腰部分でグリッと強めに刺激されて嬌声が上がる。それでも絶頂を迎えられるような刺激からは程遠く、じわじわと熱が溜まるばかりだ。 「や、これやだ……っ、ぁっ」  左側の胸ばかり刺激していた筆は、首筋を通って左耳を撫でる。首筋を何度も往復し、右胸にくると正和が下に目を向けた。 「えー、ちょっと胸撫でただけなのに……ズボンまで濡らしたの?」  わざとらしく俺のズボンを摘まみ、信じられないとでも言うような口調で、少しシミができたそれを指摘する。 「っ……」 「そんなにこれ好き?」 「好きじゃ――」 「ふふ、たくさんしてあげるね」  中途半端な焦れったい刺激ではなく、明確な刺激が欲しくて先走りを零しているのに、意地悪に再び筆で撫で回す。焦らすような優しい感触に、膝を擦り合わせると、正和さんは間を割ってそこに体を入れた。 「や、やだ……下も……」 「なーに?」

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