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第301話
(……芳文さんとのこと……言ったら俺のこと嫌いになる? 軽蔑、する?)
ただでさえ許されない行為。その上、正和さんは経験のない子が好きだ。
浮気したと知ったら……、芳文さんとそういう事をしたと知ったら……、冷める?
何であの時もっと警戒しなかったんだろう。何であの時、合意してしまったんだろう。辛くても拒否していれば。無理やり抱かれたとしても、最後まで拒否していれば、違ったかもしれない。
「じゅーん。どうしたのー?」
「――――」
「隣きて」
ベッドに転がる正和さんは、掛け布団をまくって隣をポンポンと叩いた。そっと上がって彼の隣に入ると、ぎゅっと抱き締められる。
「ん~、純かわい~」
(……芳文さんは優しい)
とても優しくて、一緒にいて心地良い。でも、それだけ。
正和さんにならどんな酷い事をされても、なんだかんだで許せてしまうけど、芳文さんにされたら……たぶん、許せない。彼の事は嫌いじゃない。嫌いじゃないけど、やっぱり正和さんが好き。凄い好き。この人と離れたくない。ずっと一緒にいたい。
「……正和さん」
「なーに?」
「……浮気する人って、どう思う?」
普通に聞いたつもりが、声が少し上擦って震えた。けれど、正和さんは酔っているからか、気にする様子もなく考える。
「ん~、最低じゃない? 信用してくれてる恋人に対する裏切り行為でしょ?」
「っ……」
(裏切り行為……)
「店なら良いんじゃないの別に。お金払ってサービス受けるだけだし」
「――――」
「……あ、でも純は変な店行っちゃだめだよ? 行きたくなったら、俺がたくさん抱いてあげる」
「……行かないよ」
「足りてないんだからね」なんて言って、唇
に啄むようなキスを落とした。
「ん~、ごめん、眠くなってきちゃった」
「……おやすみなさい」
「おやすみー。大好きだよ」
彼はリモコンで明かりを消して、俺の額にキスを落とし、抱き締めたまま眠りについた。程なくして、彼の寝息が聞こえてくる。
「正和さん……」
(俺……最低なことした)
大事にしてくれる正和さんを、裏切るようなことした。
「っ……っ、ぅ……ひっく」
(……どうしたら、許してくれる?)
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