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第2話

 かち、かち、時計の音がやけに大きくきこえる。 ——君が欲しいんだ。  先ほどの鮫島の言葉が何度も甘木の頭を反すうしていた。 「…………は?」  いくら考えても甘木には、鮫島の言葉の意味を理解することができなかった。 「俺の何が欲しいんだ」  怪訝そうにして首を傾げた甘木に、鮫島はピクリと指先を微かに動かした。 「唇」  鮫島は、ぺろり、と自分の唇を舐めると一歩、近づいてくる。それについ、甘木も一歩後ろにさがってしまった。 「さ、さめじま?」 「黒い瞳、艶やかな髪も細長くてしなやかな指も……」 「…………っ」  鮫島が一歩、一歩近づいてくるたびに甘木は後ろへと下がる。  獲物を狙う獣のような瞳で見られているせいか甘木は、下がる時に足がもつれ床へと尻餅をついてしまった。  すぐさま立ち上がろうとするが、この瞬間を鮫島が見逃すはずがなく、上に覆いかぶされ腕を床に縫いとめられた。 「……全部。甘木の全部が欲しい」 「ぁっ」  至近距離で囁かれ、また唇を塞がれた。  ちゅ、ちゅ、とついばむようなキスをされ、名残惜しそうに上唇を吸われてから唇は離れた。  頭がクラクラしている甘木は、ボーッと鮫島を眺めると鮫島がポケットから取り出した包みをみて息をのんだ。 「さ、さめじま、それだけは、それはやめてくれ」  イヤイヤと頭を振る甘木の顎をとらえ、鮫島はソレを口に含むと甘木に口づけを落とした。  カカオの香りが口にひろがり、甘木のモノがズクリと疼いた。  チョコレートは、鮫島の舌と甘木の舌で絡み合い、とろとろに溶けていく。 「ん……ふんぅ、あぁああっ」  口の中で、チョコレートが溶けていく快感に甘木の身体は一際大きくふるえた。  じわり、と制服が濡れる。 「あれ、イッちゃったの、甘木」  鮫島が確かめるように濡れたズボンに触れる。チャックをゆるめ、ズボンとパンツを一気に足元までおろすとプルン、と中から甘木のモノがとびだす。 「うわ、とろとろ」  甘木のモノの先端からは、白い液体が湧き水のように溢れだしてとまらない。鮫島の指が溢れだす液を拭おうと何度も往復するが、とまることはなく甘木の口から甘い声がきこえてくるだけだ。 「さめ、じま」 「……甘木っ」  頬を赤くさせながら、切なそうに瞳を潤ませながら鮫島を見つめる甘木に、鮫島はゴクリと喉を鳴らした。 「これ、さわって」  触って欲しそうに、腰を浮き上がらせイヤラしく腰を振る甘木の行動に、鮫島の微かに残っていた理性すらも粉々に砕けた。 「あっ……ぁああぁあん」  待ち望んでいたかのように、甘木のモノを鮫島がくわえると甘木は、歓喜の声をあげ、身体をふるわせ達した。  鮫島は、口の中ではきだされた液を飲み込むと、味わうように唇をなめた。 「ゆび、いれるよ」 「……あ、あ、あ」  ゆっくりと入れられる指の感触にゾクゾクとしたものが身体中を駆け巡る。気がつけばまた、甘木は快感に達していた。 「何回、イッてるの」  甘木のシャツからネクタイを外すと、吐きだしつづける甘木のモノを縛り付ける。 「ぁっ、やだぁ……はず、はずして」 「ごめん、少しだけ我慢して」  なかに入れていた指を抜くと甘木の赤く色づいた蕾に鮫島のモノをあてがった。 「……いれるよ」  ズンと大きな衝撃に堪えるように、甘木の身体はそり返える。 「あっ…………あ」 「…………っ」  おそらく達したのだろう、甘木の中がヒクヒクとうごめき鮫島のモノを締めつける。  その感触に鮫島も達しそうになったが、必死にこらえた。 「あぁ、もう…………どんだけ、えろいの」 「ぁあぁ!」  肌と肌がぶつかる音が激しさを増した。ぐちゅぐちゅにとろけた甘木のなかを鮫島のモノが何度も往復する。 「あ、あ…………すきぃ」  いつのまにか甘木の両手の拘束は解けていて、その両手は鮫島の背中へとまわっていた。 「…………っ、すきってこれが?」  奥に向って突き上げる。歓喜に満ちたなかが激しくうごめくのがわかった。 「これ、も……あっあん……さめじ、まも、すきぁあああぁ!」  鮫島は、自分が達するのと同時に縛っていた甘木のモノを開放した。二人の精が同時に吐き出されると、甘木は眠るように気を失ってしまった。 「……本気にしてもいい?」 ——……さめじ、まも、すきぁあああぁ! 「本気にしてもいいよね」  鮫島は、甘木の額に優しく唇をおとした。 「……んー……どこだ、ここ」  甘木が、目をさますと辺りはすっかり暗くなっていた。自分の見慣れた部屋ではないことに気づき呟く。  辺りを見回すと、すぐ近くに誰かが横たわっているのが微かにみえた。 「……さめじま……か?」  とりあえず鮫島を起こそうと甘木は、彼の身体を揺らした。 「鮫島、起きろ。夕飯食べそこねるぞ」 「……あまぎ?」  寝起きのせいか、少しばかり舌ったらずに名前を呼ばれ不覚にも心臓が高鳴った。 「起きたなら、状況を説明して……」 「おはよう、甘木」  甘木の言葉は遮られ、鮫島に甘く、優しく抱きしめられた。 「…………は?」  何が起きているのか、思考が追いつかず固まる甘木に、鮫島の顔がゆっくりと近づいてくる。 (……キス、される!?)  とっさに、避けようと顔を背けた。横から鮫島の鋭い視線が突き刺さるのを感じる。 「…………甘木?」 「すまん、鮫島。状況を説明してくれないか?何も覚えてなくて……」 「……何も覚えてない……?」  俯いて動かなくなる鮫島の様子が気になり、顔を覗こうとすると突然、鮫島は壊れたように笑い出した。 「さめ、じま?」  様子がおかしいと感じた甘木は、じょじょに後ろへ下がっていく。  離れていく甘木の腕を鮫島は、掴んだ。 「もう一回、教えてあげるよ」  力一杯に引っ張られ、鮫島の体と甘木の体が密着する。 「な、鮫島。何考えて……」  遮るように唇をおとされた。甘く優しい口づけにとろとろになった甘木は、もう何も考えられなくなる。 「好きだよ、甘木」  そう甘く耳元で囁かれ、再び甘く口づけられた。

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