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第86話

「あの、……十碧?」 「はいっ!美しいです!」 「う……、うん。何を見てそう言ってるのかは分かったから、ちょっと立ち上がろうか」 「はっ!あきくんが“ナニ”とか言ってる!!」 「言ってないよ。取り敢えず立てそうなら立ち上がろうね。あんまり見られてたら僕も恥ずかしいし」 「勃ち上がってるから恥ずかしい……」 「あの、そうじゃなくて。恥ずかしいから立ってください」 「えと、…俺のも勃ってますけど…?」 「、………うん。わかった。誂われてる訳じゃないんだな…」 独りごちてなにか納得したように頷いたあきくんは、何故だかふっと困ったように微笑んで。 俺に向けて両腕を伸ばした。 「じゃあ十碧、ぎゅってして」 「はいっ!」 ぎゅーってして、えっっろいキスもしてもらって。体がふわふわムズムズする。 俺が「お尻綺麗にしてきた」って申告した時、心の準備が…! なんて言ってた人と同一人物とは思えないような、えっっろいキスだった…!! 初めてのベロちゅーなので、十碧くん多くは語りません。 そこはまあ、ね? あきくんと2人だけのヒ・ミ・ツ♡ってやつで♪ そんな訳で、俺のオレは現在、超☆臨戦態勢です! 「…十碧。心して聞いて欲しいんだけど」 俺の身をそっと離してあきくんは、なんでかちょっと神妙な顔を向けてきた。 ん? と首を傾げれば、瞬時に赤く染まった顔を押さえて、十碧が可愛すぎる…なんておっしゃる。 あ!もしかして首コテン、あざとかったか!? この小技、対 俺のことを好きな人には有効なようです! でも、このまま悶えられてても話が進まないしなぁ。 その悶え、次回へ先送りでお願いします! 「あの、あきくん。心して聞く準備できてますよ?」 続きを促すと、あきくんは「ああ、ごめん」って首をプルプル。 改めて、俺に向き直った。 「十碧は忘れてるかもしれないんだけど、リビングにね、家族がいます」 「はっ!忘れてた!!」 「正直、僕も忘れてました」 なんだ、あきくんも忘れてたのか。 あきくん、意外とうっかり屋さんなんだなぁ。かわいい。 「それでね、これ以上は声が漏れる危険があるから…」 「えっ!?こんな臨戦態勢で!?」 「臨戦……あっ…」 今更か!今更赤くなんのか!! すっぽんぽんの俺にたった今気付いたかのように、さっきよりも顔を真っ赤に染めたあきくん。 純粋すぎるよ! って、そもそも俺のことひん剥いたのあきくんだから! もぉーっ。締まらないなぁ。 そんなトコも可愛くて萌ポイントにしかならないけど!

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