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第119話

2人が離れていったあと。 「十碧、大丈夫だった? 」 あきくんが隣にしゃがみ込んで小声で聞いてきた。 「真城君って、もしかして笹谷の…」 「あ、うん。最後の浮気相手」 「ぶっ…!」 誰だ今 背後で笑いやがったのは。 今更、全然気にしてないけどさぁ……、笑うのはやっぱ、ちょっと違うよね! 「じゃあ十碧君 今、今カレと元カレと、その浮気相手に囲まれてたんだ。…ぶふっ」 「兄さんっ!」 「…………」 ………ゲスい。この人、あきくんの実の兄とはとても思えないレベルで、鬼ゲスい………… 平茅先輩も一体、この人のドコが良くて…… 「はっ…!」 バッと立ち上がって、平茅先輩ににじり寄る。 「平茅先輩って、どっちなんですか!?」 「? どっち…とは…?」 別にどっちでも良かったわ!と結論付けたもの、やっぱり本人たち目の前にしちゃったらさぁ…… 気になっちゃうよね! ついつい訊いちゃうよね! だって俺、思春期真っ只中の男の子だもんっ! 「やっぱり、平茅先輩が突っ込む方ですか?」 声を潜めて、指で作った輪っかに人差し指をズボズボ。 「十碧っ!」 慌てた様子のあきくんに羽交い締めにされた。 あっ!そういえばこれ、内緒のやつだったっけ……。ヤバ…… 「そんな下品なことしないの!」 だけど怒られたのは、指のポーズのことだった。 「ああ。それなら、俺が突っ込みたい方だ」 平茅先輩も、全然気にしてないみたいだ。 男らしくハッキリと答えてくれた。 いい人か! 「ありがとうございます! スッキリしました!」 「そうか。よかったな」 フッと微笑んで、頭をぽんぽん。 掌おっきいな。 てか平茅先輩、男前でカッコイイな! 「鈴原君。俺も、突っ込みたい側だよ」 「……………」 出たな、お色気モンスター! 「堂上先輩が受けたい側だったら衝撃ですよ」 「えー? 意外と、雌お兄さんになるかもよ?」 「なんでそんな言葉知ってんですか! あっ、そう言うの、あきくんに変な知識与えないでくださいよ!」 「うぅん、そうだな……でも、七瀬も、もし鈴原君が相手じゃなかったら……」 「……はぅっ!? もしや先輩、実はあきくんを狙ってたクチじゃ……」 「ふふ、どうだろうね?」 「なっ───!」 「堂上、そこまでにしてやれ」 「十碧、揶揄われてるだけだからね。信じないように」 両側から腕を引かれて2人、引き離された。 俺はまた、すっぽりあきくんの腕の中。 あぁ……、もう、ほんと良い匂いする……クンクン。 「じゃあ、今度こそ本当に移動するか。雅臣(まさおみ)、俺にもご馳走してくれんの?」 「陽成さんは自分で出してください。高校生にタカろうなんて、恥ずかしくないんですか?」 「もう卒業したクセに」 「3月いっぱいはまだ高校生ですよ」 「そもそも、お前と慶一郎は1〜2年の頃から既に高校生には見えなかったろうが」 「そうですか? 俺も平茅もいまだに可愛げしかないと思いますけどね」 「うわぁ…、そこでなんで俺相手ににっこり笑えちゃうかね。このフェロモンスターが」 「ふっ、なんですか、それ」 「言っとくけど、星じゃなくて怪物の方だからな」 「それは酷いな」 楽しげな二人の会話が徐々に遠く離れていく。 「ほら、行くぞ」 ぽん、ぽん、ってあきくんと俺の頭を順に撫でて、平茅先輩が背を向ける。 俺も、いつまでもここで、あきくんの香りを楽しんでるわけにはいかない。 「十碧、行こう」 名残惜しくも離されて、差し出された手。 「うんっ!」 指の間に指を通して握り返すと、あきくんは幸せそうにふわりと目を細めた。 「……こんな風に触れ合ってると、エッチな気分になっちゃうね」 「! なっちゃうの…?」 「十碧はならない?」 「ん〜………。なっちゃうね。しょーがないよね」 「ね。仕様がないよね」 「(あき)ー、十碧くーん、先に入っちゃうよ〜!」 「なんで兄さんが一番張り切ってるんだろう」 「あははっ。とりあえず肉、食べよっか」 「十碧、今夜も泊まってく?」 「うん! あきくんがいいなら泊まってく!」 「じゃあ、沢山食べないとね」 「ふふふ、あきくんのえっちー。俺も堂上先輩 破産させる勢いで食べちゃうけどね」 「ふふ、十碧のえっちー」          【完】

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